JIBUNマガジン 文京区

2018年02月号 vol.31

路地へ一歩入って、日常を一歩出て/「狸坂文福亭」の小さなイベント「一芸大会」

2018年02月01日 23:51 by inaba_yoko
2018年02月01日 23:51 by inaba_yoko

 千駄木3丁目、一方通行の道をさらに路地に入って数歩の「狸坂文福亭」で、1月20日、「新年一芸大会」が開かれた。毎年、1月と8月に開催され、アマチュア、セミプロ、プロ、さまざまな出演者と観客合わせて毎回30 人ほどが集まる。出演する人も観る人もクチコミで年々拡がっている。

 音楽、演劇、芸能などが好きで、観るだけでは飽き足らず、自らも表現したい人、やらないけど、見守りたい人たちで作っている。お互いに見合い、ヒントをもらい、自分の表現活動に活かしていく。

 今回披露された一芸は、落語、歌、パネルシアター、一人芝居、ピアノ演奏と語り、南京玉すだれ、絵本読み、ウクレレと語り、リコーダー演奏、素語りなど。披露したのは15組、持ち時間は1組10分。

 テレビや新聞で取り上げられることは絶対なさそうだが、あまり注目を浴びないところに意外な旨みが隠れている事もある。さて、このイベントにそんなものが隠れているのか、出演した方のコメントと写真を挙げて、判断は読者のみなさまに。

 それでは「とざい、と~ざい~」

 「扉を開けた会場は笑い、手拍子、かけ声もあるアットホームな場所。一芸を披露する人、観る人の一体感がありました。南京玉すだれで参加させていただきましたが、他の方の演じる姿から、楽しさを伝えるには、演じる人が楽しんでいるのが一番いいと感じました。私も芸に工夫を凝らして楽しんで精進したいです」と、初めて参加した山本久美子さんは話す。

     (山本久美子さん)

 「ボランティアでパネルシアターの上演をしています。趣味が高じて全国の保育園やあちこちの人形劇まつりで、パネルシアター劇団『パネルジャム』として出演しています」という見米豊 (みこめ・ゆたか) さんは、「一芸大会」には9回連続の参加で芸の披露を欠かしたことはない。

     (見米豊さん)

 「一芸大会を知ったのは、同じ人形劇まつりに参加されている他の劇団の方の紹介で、おかげさまでさまざまな一芸を観る機会ができました」と楽しそうだ。「落語や楽器の演奏や歌など、それぞれが持っている技を見て、畑違いであってもパネルシアターに生かせるものがあり、毎回一つ一つの芸を楽しみながらも、刺激を求めています」と見米さん。「ここだからこその試験的な作品も披露できる」そうだ。

     (滝田恵子さん)

 見米さんを「一芸大会」に誘ったのは、滝田恵子さん。「一芸大会は楽しい!人の芸を見るのも自分の芸を披露するのも。笑って歌ってワイワイおしゃべりして、食べて」。今回はしっとりとした、語りの世界を披露。「私は人形劇団『がらくたおもちゃ箱』を主宰していますが、近頃は道具を使わないひとり芸の方が多くなり、一芸大会ではみなさんに聴いて頂きたい物語を語っています。今は影にも形にもなっていませんが、三味線で小唄を唄いたいという野望あり」と語る。

     (棗田真澄さん)

 「始めはこんなこと、できるようになったから見て!見て!ということから、だんだんと人を楽しませたいって気持ちが出てきたように思います。長年やってきて、みんながそうなってきたので、ますます楽しみになっているように思います」。13年前に「一芸大会」を立ち上げたメンバーの一人である、アマチュア落語家、棗田真澄さんは、そう振り返る。

 客と演者が、提供者と受け手という関係ではなく一体なので、試験的な試みも安心して発表でき、また演じる人同士もお互いに多様な芸を見合って、楽しんで、それぞれがその後の自分の舞台に生かせる、ささやかな路地裏のイベント「一芸大会」はそんな場なのかもしれない。

 「これにてお開き~」。ではでは。

 狸坂文福亭 e-mail tanuki.bunbukutei@gmail.com

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