JIBUNマガジン

2019年11月号 vol.52

本をめぐるまち歩きで出会いを/千石ブックメルカード(一箱古本市)

2019年11月15日 13:58 by Takako-Oikawa

「これが筋肉、これが背骨。だしを取るのにいいのは筋肉。おいしいよ。食べてみる?」

「ううん」

千石駅にほど近い「文京子育て不動産」の前で、子どもたちが熱心に小さな干し魚を解体しては絵図と照らし合わせ、並べている。「煮干しの解剖教室」だ。巣鴨にある科学教育本の出版社「仮説社」の主宰イベントだ。かたわらでは小さなスペースの古本市。店内でも楽譜やCDが並び、古楽譜市の様相。中にいた知人がおもむろに「はかれないものをはかる」という大人の絵本を読み聞かせてくれた。深い。

 10月20日に千石の4つの場所で千石ブックメルカード(一箱古本市)が開かれた。一箱古本市とは、地域のさまざまなお店「大家さん」の軒先を借りて、「店主さん」が段ボール箱ひとつ分の古本を販売する「本屋さんごっこ」。2005年から谷根千で始まった「不忍ブックストリート」の活動の一つだ。「千石の住民として、自分の住むまちでもやってみたかった」と、千石在住で千石の出版社に勤める松本貴子さんは言う。

 松本さんは5年ほど前から不忍ブックストリートの一箱古本市で、準備や当日の手伝いをする「助っ人さん」をやってきた。「地域や人との一体感が楽しくて」。地元千石でも開催したいと思い続け、子育てが一段落したところで、「今ならできかも」と企画した。

 千石在住のデザイナーにチラシ作成を依頼し、千石に本社がある紙芝居や絵本の出版社「童心社」をはじめ、コミュニティカフェ「風のやすみば」、シェアスペース「千石たまご荘」などに声をかけて古本市の「大家さん」を確保。ご縁がご縁を呼んで仮説社などともつながり、いろんなワークショップ開催につながった。

 千石4丁目の童心社前はたくさんの店主さんが並んだ。4階のホールでは、千石で長年絵画教室をやってきた島崎啓子さんによる絵本づくりワークショップ。書籍製作の前につくる白紙の本「束見本(つかみほん)」を活用し、そこに自由な絵を描いて絵本をつくってみようというもの。「ここに40年前に作った絵本があります。当時子どもだった作者は今はパパとなって、子ども2人を連れて訪ねてきてくれましたよ」と島崎さん。

 道端で人に紹介されて挨拶した童心社社長の田中正美さんが「いま注目の絵本作家、石川えりこさん、さとうあやさんによる読み聞かせ会もありますよ」と言うので、千石たまご荘に急いで向かった。なんと、古本が並ぶ「店先」を借りた露天での読み聞かせ会だった。ご自身の紙芝居や絵本をそれぞれが読んだほか、つくりたてほやほやの新作も披露。実は童心社のホールで、子どもに交じって束見本に絵を描いて即席で作っていたのだった。

 風のやすみばで休息をとる人もおり、親子連れなど、4つの点を結ぶ人の流れができていた。松本さんは「まちあるきも楽しんでもらえたらうれしい。ちょっとずつでもやっていければと思う」と話していた。(敬)

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