JIBUNマガジン 文京区

2019年11月号 vol.52

就活への疑問抱える大学生、男女チームで製品企画から販売までを競う

2019年11月15日 14:27 by Takako-Oikawa
2019年11月15日 14:27 by Takako-Oikawa

 文京区内の大学で経営学を学ぶ学生6人が、男女3人ずつのチームに分かれ、モンゴルレザーブランド「HushTug(ハッシュタグ=本社・豊島区)」の支援のもと、革製品のデザイン企画から製造、販売までを手掛け、売り上げを競っている。女子チームは名刺入れを、男子チームはガジェットポーチを開発。オールインワン方式のクラウドファンディングを利用し、リターンの形で製品を提供(販売)する。期限は11月28日まで。果たして軍配はどちらに。

 6人は大学3年生。女子チームの小川弥生さんは「新人の離職率は高いと聞く。就活のシステム自体が形骸化してるのでは」。男子チームの補伽直紀さんは「海外で就職したいとか起業したいとか思っていても、卒業したら就職という流れにみんな乗ってしまう」。それぞれ就活への疑問が出発点にある。「座学ばかりでなく、学生のうちにお金を動かす実践的な取り組みでビジネスを体感してみたかった」と小川さん。

 プロジェクトを始めたきっかけは、6人が所属するゼミナールに、HushTug代表の戸田貴久さんが招かれ、ベンチャービジネスについて話したこと。戸田さんは5年前、24歳で起業したが、縁あって訪れたモンゴルで、人々に活気があることにひかれ、1年間現地で暮らしてみた。すると貧富の差や大気汚染といった課題が見えてきて、解決策を模索していたところ、質の高いモンゴルレザーに出合った。現地で職人を探しブランドを立ち上げ、昨年商品化にこぎつけた。オールインワン方式のクラウドファンディングで、目標を大幅に上回る「売り上げ」を達成。「クラウドファンディングは理念を広げられる。大学生との今回のプロジェクトで、能力もやる気もある若者たちが閉じこもっている殻を壊せたらおもしろい。失敗から学べることは多いので、成功しなくてもいい」と戸田さんは話す。

 女子チームは、就活生が使う名刺入れを企画。「就活ではみんな定番の黒いスーツに身を包み、面接の受け答えも型にはまっている。少しでも自分らしさを出せるアイテムとして、身につけるだけで気分があがるような商品にしたかった」と小川さん。そこで、裏地3色と、ステッチ4色を選べるようにした。

 男子チームは「就活の枠にはまらず自由でよい」ということを表現するために、形は縦でも横でも自由に入れられる正方形にし、縛れない=自由というしゃれ心でゴムバンドを内部に使用した。「スマートさと遊び心を入れた。学生は考えることが多すぎて頭の中がぐちゃぐちゃ。カバンの中でもケーブルやモバイル機器類はぐちゃぐちゃしてるので、整理してみようという提案も込めた」と補伽さん。

 コンセプトやストーリーづくりからデザイン、サンプルづくり、売価の設定、クラウドファンディングのサイトづくりまで、学生自身で練り上げた。戸田さんは「サンプルの修正一つ、コストがかかることがわかってもらえたと思う。製品化のプロセスでビジネスの学びがあったはず」と言う。実際、小川さんは「デザインを変えるのにモンゴルとやり取りしなければならず時間がかかった。文章はHushTugの方に指導を受けながら私が3人の意見をまとめたが、思いを伝える難しさを実感した」と話す。補伽さんは「働くって大変だな、社会人って大変だな、と感じた」と語る。「アルバイトをするのと全然違う。企業とのやりとりの中でビジネスの実際を知ることができ、調整力とか身についたかな、と思う」

 女子チームは「日本の就活の暗黙のルールを変えたい!現役女子大生による就活女子のカスタム名刺入れ」のタイトルで1つ5600円、男子チームは「モバイルアイテムをまとめて快適に。大学生が考案したレザーガジェットポーチ!」の題で1個6000円でクラウドファンディングを実施中だ。(敬)

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