JIBUNマガジン

2019年11月号 vol.52

自然、命、存在とは。青島左門展、狸坂文福亭で

2019年11月12日 00:56 by Takako-Oikawa

14畳ほどの小さなスペースに、絵が3枚。正面の絵に描かれた小さな赤いバラが、一瞬、動いたように見えた。

文京区千駄木3丁目、閑静な住宅街の中にある「狸坂文福亭(たぬきざかぶんぷくてい)」で、芸工展2019の一環として、現代美術家、青島左門さんの新作絵画展が開かれている。青島さんは絵本や紙芝居も作っており、22日10時半から親子対象のギャラリートークが、23日17時から青島さん作の絵本と紙芝居の読み聞かせと、奄美出身のユキへぃさんの三線(さんしん)のコラボイベントがある。

青島さんは谷中に暮らした時期もあるが現在は長野県大町市在住。作品は各界から注目されている。取材日も先客は大手広告代理店の人だったらしい。「東京五輪誘致にかかわった人ですよ」と青島さんはさらりと言う。展覧会場に狸坂文福亭を選んだ理由は「私自身が、生活の中から作品をつくることを大事にしているので、日常の中のスペースである点がポイントだった。あとは建築と照明がおしゃれで、ネーミングの遊び心も気に入った」という。

美術の道を進む前、「舞踏」の世界に踏み込んだ。高校生のとき、舞踏がテレビで紹介されていて、魅了された。「当時、本質的な日本文化はどこにも残っていないと思っていたが、舞踏を見て、田植えとか日本人の身体に合わせた動きだったので、あ、ここにに日本の文化がしっかり残ってたんだ、と思った」。高校卒業後、2年半、舞踏家の大野一雄大野慶人の稽古場に通った。そこで表現のあり方、核心のようなものを学んだ。

そんな折、洋画家だった父の青島三郎氏が亡くなった。自分は何をすべきだろうと考えた結果、美術の道へ進むことを決意。独学で絵の描き方を学んだ。美術家田島征三のアシスタントをしていた時期もある。イメージを形にする作業を通して、インスタレーション(仮設の空間芸術)や現代アートの形式を学んだ。

しかしアートだけでは食べていけないので、絵本も創作したし、白馬観光開発の依頼で、紙芝居もつくった。紙芝居には地域の観光資源である白馬の固有種を描いて欲しいという条件がついた。地域の人たちに、白馬の自然を知ってもらうねらいだという。「手がけてみて、紙芝居には舞台的な要素があっておもしろいと思った。上演が前提なので、子どもたちに披露するライブのおもしろさがある」

本業の方は、美術館で展示をした2014年ごろから軌道に乗り始めた。「自然と命がキーワード。あと、存在」。父の死をきっかけに、石で葉っぱの彫刻を作り、それが代表作の一つになった。葉脈まで繊細に表現してあり、光が透けるほど薄い。「秋に、葉っぱがはらはらと落ちていくのを見た。源氏物語の紅葉賀(もみじのが)の章を読んで、無常を感じた。それらがインスピレーションの源。存在を表現するのに適した素材が石だった。石であることで、命とは何か、相対的に追求してみた」と青島さん。

「葉っぱ」と題した作品を最初に展示したのが、芸工展だった。その後、作品はインスタレーションや彫刻が中心だったが、このほど、本格的に絵を描いていこうと決めて開いたのが今回の展示会。「原点である芸工展に戻ってきました」。3点しかないが、その存在感は大きい。

狸坂文福亭は、何を隠そうJIBUNライターである稲葉洋子さん宅の1階だ。青島さんの母と稲葉さんが知り合いである縁から、青島さんが下見に来て、一目で気に入って会場に決めたという。日々どんなことが起きているかのレポートは稲葉ライターに譲る。22日、23日のイベントは無料。狸坂文福亭はコミュニティバスB-ぐる千駄木・駒込ルートの「千駄木小学校」近く。(敬)

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