JIBUNマガジン 文京区

2022年04月号 vol.81

本郷の「もりばあのいえ」が根津で新たなスタート/活動を引き継ぎ、その名も「谷根もりばぁ」

2022年04月16日 03:49 by inaba_yoko
2022年04月16日 03:49 by inaba_yoko

「もりばぁ」が再来した。2021年12月、根津の旧藍染川沿いの倉庫に。

かつて本郷森川町(本郷6丁目)に「本郷もりばあのいえ」というのがあった。2016年、本郷で親しまれていたパン屋さんが閉店し、地域の新しい拠点として再出発したのだった。立ち上げたのは「文京のライフスタイルを考える会」(Bunkyo Lifestyle Thinktank)。文京区における生活空間の質の向上を、建築デザインとその空間運営によって目指す団体だそうだ。「本郷もりばあのいえ」は、「文京区本郷にある森川町会で、『気軽にみんながお茶できる場所がほしいね』というおばあさんたちの声を受けて、森川町会の『おばあ』〈BA〉さんたちとの地域の新たな場〈BA〉作り、そしてだれもが気軽に立ち寄れる場所バール〈BAR〉を目指したいという思いで名付けられた」という。

その後、建物が取り壊されることになり、拠点としての場はなくなったが、今は暗渠になっている旧藍染川沿いに「谷根もりばぁ」の名で再オープンした。不忍通りから谷中側に入った路地にある。不忍池に向かって急に川幅が広がったようなあたりだ。

倉庫の設計と大工作業は、若者の建築事務所JAMZAの長谷川駿さんと猪又直己さんがすべて手作りで手掛けた。本郷の「もりばあのいえ」の時代から関わっているメンバーだ。ご近所でも評判のシャッターは、建築家でもある内田くみこさんの作品だ。「谷根もりばぁ」は、猪又さん、長谷川さん、内田さん、中尾純子さんの4人で運営されている。

取材に伺ったのは2022年2月。「倉庫のオーナーさんが、『人のため世の中のためになるならいいよ、貸しましょう』と言ってくださったんですよ」と、「谷根もりばぁ」の運営者の1人、純子さんは言う。「家賃は今は思いやり価格にしてくださっていますが、早く資金を作り、きちんとお支払いできるようにしたいです」。どのように資金を集めるのか。「ビールサーバーも入れたので、もう少し暖かくなったらビールを売ったりとか」。純子さんが言うとあっという間に集まってしまいそうに明るく聞こえる。

倉庫は平日と休日とで週に3回くらい開けている。活動は本郷時代から引き継いだものも多い。「もともとは、視覚障害のある人が集まる場がないと聞いて、そういう方たちが気をつかわないで、お茶とかできる場所を作りたい、と始まった」。見える人が見えない体験をする活動も定期的にやっていくという。ほかにも、本郷からつながる活動の一つ、「学習支援」。3月に子どもたちの勉強会を開いた。どんな子どもたちも参加できて、勉強というよりは勉強の場の空気を作りたいという。純子さんの知り合いの方に声優で女優という人がいて、学習の場で読み聞かせをやってもらう企画もあるという。

また、向丘でやっているゴミ集め、「ほっちり隊」を根津で展開したいということで、この日も「プレほっちり隊」として、以前からのメンバーが集まり、道路のゴミを集めていた。

根津に移った「谷根もりばぁ」で始まった活動に、月1回の落語会がある。兄弟子の立川笑えもんさんと弟弟子の立川笑王丸さんが定期的に「前座勉強会」を開いていて、その日に行くと気軽に落語を楽しめる。

「いろいろなことができる場所を作りたい、みんなで楽しいことをやりたいという思いで活動しています」と中尾さんは力を込めて言う。「この一回ではなく、活動ごとに記事にして広げてください」と、私にも注文をいただいた。

「谷根もりばぁ」では、災害などへの寄付の取組をしている。「くるくるコイン」という機械があり、子どもでも楽しく寄付ができる。上の投入口からコインを落とすと、すり鉢状の大きな受け皿の上をコインがくるくる回り、下の溝へと吸い込まれていく。外国製のマシンで、1台30万円だという。「これがどうしてもほしかったの」と純子さんは笑う。昔からあったもので、動物園ではこのマシンで寄付を集めて、ニュージーランドの森林火災時にコアラの危機を救うための寄付をしたこともあったそうだ。

「たとえば、子どもが町に座る場所を作りたいと思うような時、小さいことは行政では難しかったりすることもあるじゃないですか。そんな時このマシンを使って、同意するみんなでここにお金を入れていけば、すぐ実現します。ちっちゃなクラウドファンディングですね。子どもたちがコインを手に走ってきて、何も言わずにくるくるってやって帰っていくって素敵な光景でしょ?」。ちょうどそこへ、ご近所の方らしき人が、コインを投入しに来た。思わず連られて私も少額ながらコインを投入した。 

今はまだ本格的に活動が始まっていないので、この先が楽しみだ。純子さんの持ち前のネットワーク構築力で、おもしろいものがどんどん広がっていきそうな気がする。(稲葉洋子)

「谷根もりばぁ」文京区根津2-32-10バルセ藍染倉庫

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