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2022年04月号 vol.81

谷根千→鳥取へ移住の孫大輔さん監督作品第2弾、映画「うちげでいきたい」/在宅看取りがテーマ、上映会通して対話の機会を

2022年04月15日 01:42 by Takako-Oikawa

蝉の鳴き声。おっとりと聞こえる鳥取の方言。映画「うちげでいきたい」は在宅看取りをテーマにしているのに、全編が温かさに包み込まれた印象で、死を扱った映画という重さがない。長年「谷根千まちばの健康プロジェクト(まちけん)」にかかわり、2年前に鳥取県大山町に移住した医師の孫大輔さんの監督作品。谷根千のまちを舞台にした「下街ろまん(過去記事参照)」に次ぐ第2作目だ。このほど、谷中の「九条Tokyo」で上映会が開かれた。

孫さんは東京大学医学部で教鞭を取りながら家庭医として地域医療や市民との対話に力を入れ、そのかたわら映画学校に通って映画制作を学び、2019年に「下街ろまん」を完成させた。鳥取大学医学部へ移って2年、「もう二度と映画を撮ることはないだろう」と思っていたら、地域プロジェクトから思わぬオファーがあり、制作することになったという。

もともと、「人のつながりが人を健康にする」という考えのもと、谷根千で「まちけん」を立ち上げ、「映画部」が発展して「下街ろまん」の映画づくりにつながった。人口1万5千人の鳥取県大山町に住むようになり、引き続き地域医療や対話に携わるなかで、鳥取大学と日本財団の後押しで、「大山100年LIFEプロジェクト」が立ち上がった。人生100年時代、老後の暮らし、医療や介護について考える機会をつくろうというものだ。その一環で、在宅ケアや在宅看取りを普及しようということになり、映画をつくらないか、という話が沸いたそうだ。

 2021年3月に構想し、脚本は、岡山県奈義町で劇団「OiBokkeShi(オイ・ボッケ・シ)」を主宰する菅原直樹さんに依頼した。菅原さんは俳優で介護福祉士で、介護施設で働いていたときに介護と演劇の相性がよいと気づき、「老い」「ボケ」「死」をポジティブに捉える演劇活動をしている。友人知人のつてや、島根の俳優事務所を通して、スタッフや俳優を集めた。地元大山診療所の医師や、孫さん自身もチラリと出演し、主人公の息子役はなんと、地元の水道屋さん。東京の劇団で修業したことのある人で、演技も上手だった。「スタッフも半分は素人さんでしたが、下街ろまんの経験から、できるという自信がありました」と孫さん。

医師としての多忙な仕事の合間に取れる時間は1週間だった。「1日撮影して仕上がりは5分にしかならないものなので、5分×7日間でだいたい30分の映画かな」というつもりで9月に撮影し、10月から12月にかけて編集、40分の作品になった。

「うちげでいきたい」の「うちげ」は「わが家」のこと。映画で描かれたのは、末期がんを告知された主人公のおばあちゃんの日常。引きこもり、シングルマザー、不登校といった現代的な家族の問題を織り交ぜつつ、在宅ケアや看取りを正面から取り上げるのではなく、死に直面した人とその家族をおだやかに、時にユーモラスに描いている。

「『下街ろまん』は映画づくりのプロセスでまちの人を巻き込んで楽しむことがコンセプトだったが、今回は上映会を通して住民と対話していきたい」という。すでに何度か上映会をしているが、「いよいよなので考えなくては」「家族で話し合ってみる」「私はあんなにやさしくなれない」といった、自らに引き付けた感想が寄せられているという。

上映会は基本的に地元中心にやるという。上映スケジュールや自主上映の相談はこちら。予告編はYouTubeで見られる。また、「大山100年LIFEプロジェクト」のnoteに孫さんや脚本家の菅原さんらのインタビューが掲載されている。(敬)

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