JIBUNマガジン

2020年10月号 vol.63

小学校跡地を住民の手で地域の公園に/新規オープン「雑司が谷公園」の「ひろばくらぶ」

2020年10月17日 16:36 by inaba_yoko

雑司が谷プレーパークが、今年3月にオープンした「雑司が谷公園」に開催場所を変えるということで取材に出かけ、あちこち写真を撮っていると、大きなボードの設置作業をしている男性に出会った。公園に対する意見を貼りだすための「ご意見ボード」だという。住民たちが運営管理する公園をめざしていて、NPO法人「雑司が谷ひろばくらぶ」が公園の業務や活動を担っているという。その男性は、事務局的な役割を担っている小野加瑞輝さんだった。

雑司が谷公園は東京メトロ雑司が谷駅、都電荒川線鬼子母神前駅から200mほどのところにある。文京区目白台までは100mほど。木の多い静かな場所だ。鬼子母神参道側の入口を入ると、右手には噴水に囲まれた大人気の「水遊びひろば」や小高い丘を有する「どんぐりひろば」、ローラースライダーのある「こどもひろば」がある。フェンスに囲まれた「ボールひろば」はテニスコートが2面とれる広さで、ボール遊びはだいたいなんでもできる。

「ボールひろば」の隣に「丘の上テラス」という建物があり、「まちの縁側」をめざしているという。お茶を飲みながらおしゃべりしたり勉強したりできる広いエントランスホールがある。後日、小野さんをはじめ、理事のみなさんにお話を伺えることになり、テーブルを囲んだ。「取材は初めてです」「商店街は最近結構取材が入りますけどね」。そういえばすぐ近くに、弦巻商友会という昭和の時代にタイムスリップしたようなおもしろい商店街がある。

「ここはもともと、豊島区で2番目に古い高田小学校が18年前に廃校となった跡地です。廃校にならなければ創立140何年という歴史を持った学校でした」と小野さんは言う。雑司が谷・南池袋地区には3つの小学校があったが、1つの小学校に統廃合され、中学校も統廃合された。「学校は地域の防災の要にもコミュニティの要にもなっているのに、4つがいきなり1つになってしまった」

大きい通りに面した学校跡地は超高層ビルが建って、1つは区役所になり、1つは高齢者施設に。「ここだけは幸か不幸か周辺の道路が狭くて解体も何もできず、ずっと放置されてきたんです」と小野さんは笑う。高田小があった雑司が谷2丁目は谷底低地で地盤がゆるく、道が狭く家屋が密集しており、災害の危険度が高いのに、防災まちづくりがされてこなかったという。

後に「雑司が谷ひろばくらぶ」の理事長となった清田明さんが中心となって「まちづくりの会」の活動として、自主的に研究をし、学校跡地を公園にすること、周りの道路は安全性を考慮しながら雑司が谷らしい町並みを残しつつ最低限の整備をする、という提言を豊島区にした。それを受けて区は8年前、学校跡地の公園づくりと都電から南側の地区の防災まちづくりに着手した。

区が最初に取り組んだのが近隣の住民を対象にしたワークショップだった。「白紙の状態で住民に入ってもらい、計画作りから住民参加でやりました」と小野さん。50人くらい集まり、そのメンバーを中心に「検討会」が作られる。地元の人たちが求めたのは、まずは救援防災センター機能を持った公園と、コミュニティをはぐくむような施設だった。「いざというときには災害の拠点となる施設に、という要望から『丘の上のテラス』ができた」という。理事長の清田さんは、「行政側は、公園の法律でこういう施設は公園の面積の何パーセントと決まってると、そういう説明でしたよ。最初は」。それが都市計画法の改正もあり、だんだん住民の要望寄りになっていったという。「8割9割はかなえられました」

計画がほぼまとまった時に、豊島区から校舎を残して民間活力を入れて運営したいという提案が出された。しかし校舎の耐震強度が低く、補強して残すこともできないとわかって、結局その話はなくなったが、そこから「民間活力を積極的に採り入れよう」と新しい流れも生まれたという。

普通の公園では区が全部管理して、住民は参加できない。そうではなくて、住民が積極的に参加できるようにしようということを逆提案した。それには指定管理者になる方法があるが、それなりの組織と財力が必要で、いきなりできるものではない。まずはNPO法人を作って、時間をかけながら人材も財力も身につけていこうということになった。「それが3年前」

「今はシルバー人材センターが区からの委託で公園を管理、区も我々が参加できる場所を提供してくれているので、実際的にはシルバーと一緒に施設の管理を任されているという状態です」。シルバーとかぶるメンバーもかなりいるという。「シルバーも地元の人が中心。ひろばくらぶも地元の者。だから地元の人による管理はもうかなり実現している」。ゆくゆくはひろばクラブが管理を区から委託される形をめざし、そのストーリーを区も一緒に考えてくれている。

 現在の活動内容は、子どもたちが思い切り遊べる場、「ぞうしがやプレーパーク」、雑司が谷公園と雑司が谷中央児童遊園を対象にした「公園の花壇づくりと清掃ボランティア」、道路に面する建物の緑の工夫を表彰する「前庭コンクール」、小中学生の見守りをする「みみずく隊」の4つがメーンだ。「中央児童遊園は、区が予算をかけてすばらしいトイレを作りました。花壇も作って。区から花壇作りとボランティア清掃の声がかかり、私たちが植え替えたり、落ち葉を掃いたり、月に2回清掃をしています」と、理事の武藤潔子さんは言う。「トイレを変えたことでよい変化があったので、豊島区はトイレは大事だということになったのでは」と思っている。

小野さんは言う。「豊島区は23区で一人当たりの公園面積がダントツ最低なんです。一人当たり0.64平方メートルしかないです。区も公園を増やそうとしているのですが、人口も増えているのでなかなか一人当たり面積は増えません。私たちは地元の人のための公園を作りたいと思っています」。まちの公園というのは、地元の人が集まってきていかにゆったりできるかがポイント。「結局災害時には、いつも使っている公園に人は集まるんですよ」

丘の上のテラスには、親子で楽しめる図書コーナーや、集会室が2つあり、中高生が楽器の練習もできる防音室、日向ぼっこによさそうな屋上庭園もある。テラスの屋根からは、大きな土庇(どびさし)がのびていて、公園に来た家族や友人が、椅子に腰かけテーブルを囲み、夏は涼み、冬は日なたでくつろげる。テラスの裏側はボルダリング。ポンプで汲みだせる深井戸があり、飲み物を売るパークトラックもあり、遊び心満載だ。

「今までは議論の場でしたが、開園して具体的なことに触れて、指定管理者をめざす意識が強くなりましたね。これまで以上に」と理事長の清田さん。小野さんが「できたばかりなのに問い合わせも多く、これだけの関心が集まる公園ができてよかった」と言うと、理事全員がうなずいた。(稲葉洋子)

 

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