JIBUNマガジン

2018年06月号 vol.35

都市の日常に作り出したナチュラルな時間と空間/「ロバの音楽座~愉快なコンサート~」

2018年06月03日 15:09 by inaba_yoko

 かすかな風が大きなテントの白い布をふんわり膨らませながら、過ぎてゆく。

 2018年5月の土曜日の午後、文京区向丘の光源寺の芝生に、200人近い観客が集まってコンサートは始まった。ファミリー全員の参加、母と子、ご夫婦、高齢の方お一人でなど、あらゆる世代からの参加、文京や近隣の区の方が多いが、神奈川から東京へ仕事で来たついでに、コンサートのことを聞きつけて駆けつけた人もいる。

 スタッフは文京区の下町のメンバーを中心に荒川区、台東区からのボランティアの有志20人ほどと光源寺の関係者、そして大人のスタッフについてきた子どもたち。開場時間になると、きびきびと動く若いお母さん達の誘導で、観客はステージの演奏スペースの前列から順繰りに芝生に敷かれたシートに座っていった。窮屈ではない程度にしっかりつまった距離感で大人も子どももひとりひとり、わくわく感がひろがっていくようだ。

光源寺でコンサートを開きたい!

 コンサートの主催者は、NPO法人「子ども劇場 荒川・台東・文京」文京ブロック。実は私はこの会員だ。親子数百人で聴くコンサートを、文京区で開きたいと思い始めて2年ほどたって、「ロバの音楽座」にお願いすることができた。会場はぜひ光源寺を、と思っていた。というのも、光源寺で毎年7月9日、10日に開かれる「ほおずき千成り市」に参加しているのだが、この縁日は、地域の住民有志で作り上げていて、同じように有志で作り上げるコンサートを開きたいと思ったのだ。

 ほおずき千成り市では、専業の露天商ではなく、地域の人が出店している。光源寺の奥さん、島田富士子さんは、「あるとき(平成12年ごろ)、ほおずき市に露天商が現れなかったのです。この時、『チャンスだ!』と思いました」と語る。露天商の店に地域の人が買いに来るだけで、楽しいだろうか。地域にとって価値があることだろうか。そう思っていたからだ。「地域の人がかかわり合って、知り合いになって、人の輪でできることをお寺でやりたかった」という。「親しくしている人が、手作りの品を作っている人を紹介してくださって、『ほおずき千成り市』を開いたんです。お琴を触らせてくれたり犬を触らせてくれる出店者があったりして、入れ替わりはありますが、出店は年ごとにに増えていきました」と続ける。縁日は準備段階から地域の有志が作っている。

 「大事にしていることの一つは、みんながわきあいあいと準備をしていくこと、それぞれできるところをやりながら、代表者にやり方を質問するのではなく、お互いに教え合いが行き交うような人間関係を作ることです」と富士子さんは言う。「人が交替しても続けられ、それが地域の力となり、災害の時にも大きな力を発揮する」と考えている。「それで、看護師や調理師も縁日には参加してもらっている」そうだ。

 そういうお寺さんの考えのもとで、「ロバの音楽座/愉快なコンサート」の会場を借りることができた。

コンサートのスタッフをやってみたら…

 スタッフは近隣の地域から集まった。ホール公演とは違い、野外のコンサートは天候や音、いろいろなことし想定しなければならない。一番の心配は雨や風。スタッフは当日の運営だけではなく、前日の朝からテント張りをしたりシートを敷いたりした。

 2日間大型テントや中央の大きな布テント張りに力を発揮した中村竹夫さんは、以前サッカーのイベントの仕事をしていたそうで、テント張りはお手のもの。「区の地域連携ステーションで知り合った方からぜひに! という声かけで、地域とのつながりを作りたくて参加しました」と言う。「一つの目的に向かってみんなで協力する作業は楽しかったです。千駄木に住み始めて1年半、地域とのかかわりはまだまだ」だそうだ。「立場がさまざまで生活の背景も違うスタッフが、一つの場所に集まって協力し合う、それが体現できる場所でした」と嬉しそう。この先、整体業をやっていく中で、地域との関わりができる活動をやっていきたい」と語った。

 今年に入って、主催や協力で、地域での舞台鑑賞の会にすでに3回続けて関わっている伊東静香さんは、大阪にいたとき働いていたNPO法人「北摂こども文化協会」が、もともと子ども劇場が母体となっているNPOで、そこで舞台鑑賞の企画をしてきたという。東京に引っ越して来てからも、子どもにかかわる活動をしたいと、ダンスの発表やフリーマーケットなど子どものやりたいことを実現するサポートをしてきた。

 今回のコンサートについて、「光源寺は地域ではよく知られているお寺ですが、子どもが参加できるコンサートをやることで、スタッフも参加者もいろいろな人がみんなで集って充実した」と語る。「コンサート会場はお寺の芝生から外が見渡せたり、外からコンサートが垣間見えたり、この集いが地域に広がっている」と感じたという。「おまつりですね。集まってみんなで盛り上げるのは、『ほおずき市』のイメージです」という。「これからも単なる鑑賞だけでなく、出演者もスタッフもつながれるような、みんなでいっしょに作るおまつりを作りたい」そうだ。

観客のみなさんの期待を受け止め…

 「ロバの音楽座」のについて、メンバーの一人で、リコーダーやフルートなどを担当している大宮まふみさんに話を聞いた。

 「ロバの音楽座」は1982年に結成、中世ルネッサンス時代の古楽器や空想楽器を使い、音と遊びの世界を全国の子どもたちに届けている楽団だ。大宮さんも一観客として「ロバの音楽座」に出会った。「古楽器のやわらであたたかな音色を、子どもたちは本当によく聴いてくれます。そして、音楽は自由で楽しいものだということを、感覚的な部分ですごく共感し合っている」と語る。

 今回のコンサートについては、「演奏スペースに立ち、観客と向き合ったとき、くいいるようにこっちを見てくれていて、期待が伝わり嬉しかった。野外だと散漫になってしまうかと、少し心配に思っていましたがすごい集中力でした」という。「野外ではなかなか演奏する機会がないですが、ここちよい風が吹いてきて、開放感があって、条件が合えば野外で、こんなにステキになる」と感じたそうだ。「経験を積んだスタッフの方が準備して、丁寧にコンサート環境を作ってくれたことが感じられた。何気ないようでいろいろな配慮があったことが、コンサートの成功に繋がっていった」という。

 立川には、「ロバの音楽座」の拠点、「ロバハウス」があり、今回の参加者の中にも「クリスマスコンサート」に行ってファンになったという人もたくさんいた。この先「ロバハウス」を訪れるツアーを企画したいという声もあがっている。

「ロバの音楽座」についてはサイトで。

(稲葉洋子)

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