JIBUNマガジン 文京区

2017年08月号 vol.25

【まち】ハーモニカ学習が小学校から消えた理由とは?子どもたちと100年の歴史あるトンボ楽器製作所を訪ねてみた

2017年09月01日 21:36 by Takako-Oikawa
2017年09月01日 21:36 by Takako-Oikawa

 質問。小学校の授業でハーモニカを習った方~。鍵盤ハーモニカだった人~。

 あなたはどちらですか? 実はこれで年代がわかっちゃうんです。

 ハーモニカはかつて、学校音楽教育の主役でした。ところが1970年代後半以降、鍵盤ハーモニカに取って代わられてしまいます。さあ、なぜでしょう。答えはこのあとのインタビューの中で。

 荒川区西日暮里に、ハーモニカの製造を始めて100年になるトンボ楽器製作所のショールームがあります。7月、JIBUNと荒川区民による地域情報ウェブマガジン「荒川102」による協働講座「親子で学ぶ記者体験」の一環で、子どもたちとトンボ楽器製作所を訪ね、創業者のひ孫にあたるマーケティング部長の真野哲郎さんに聞きました。(子どもたちによる質問に加え、追加取材しています)

曽祖父のおもちゃ作りから始まった

――どういう会社ですか

 1917(大正6)年に最初のハーモニカを私の曽祖父真野清次郎が作りました。今年で100年です。ハーモニカが日本に入って来たのは明治時代のようで、「西洋横笛」と呼ばれていました。祖父はもともと真野商会という玩具問屋を営んでいて、輸入品のハーモニカで壊れたり使い物にならなかったりしたものを分解して、おもちゃのハーモニカを作っていたんです。それが評判だったので、楽器として製造販売を手掛けるようになりました。最初は自宅の庭先で作り始めたのです。

――どうしてトンボという名前なんですか

 当時、会社名に昆虫の名前を付けるのがはやっていたそうです。バタフライとかコオロギとか。コオロギというのは木琴を作る会社だったようです。

――もうかっていますか?

 昔は大きかったのですが、今は小さくなりました。というのも、昔は学校教育にハーモニカが採り入れられていましたので、小学生が全員ハーモニカを持っていました。ベビーブームの時代は年間200万人の子どもが生まれていましたから(2016年は97万人)、毎年200万本のハーモニカが必要になるわけです。わが社以外にもたくさん会社がありました。ところが学校では昭和50年代(1970年代後半~80年代前半)から使われなくなり、需要が減ってしまったのです。いまわが社では年間50万本ぐらい作っています。

 ハーモニカを作っている会社は希少で、いまや世界で6つぐらいしかないんです。日本では4社。その中でわが社が最も古いです。

――なぜ学校で使われなくなったのですか

 ハーモニカは教えにくかったのだと思います。口で楽器を覆ってしまうから、何の音を吹いているのかがわからない。先生方も吹き方を習ったわけではないし、どう指導してよいかわからなかったのでしょう。その点、目に見える鍵盤の方が教えやすい。ですから鍵盤ハーモニカに代わっていったのだろうと思います。

 

クラリネットやサックスの仲間!?

――ハーモニカは何種類ぐらいあるのですか

 トンボ楽器で500種類あります。いろんなキーがあるので、それを入れると、の話ですが。ネックレスにできる指先サイズのものから、重さ1キロもあって低い音を出すバスハーモニカとかコードハーモニカと呼ばれるものまでいろんなサイズがあります。

――ハーモニカは誰が作ったのですか

 諸説ありますが、ドイツのクリスチャン・メスナーさんという人が最初に作ったと言われています。

――なぜハーモニカという名前なのですか

 多くの楽器は音が一つしか出ないと思いますが、ハーモニカは一度にたくさんの音が出せます。和音が吹けるのです。英語で和音のことをハーモニーと言います。それが由来です。

――ハーモニカは何でできていますか

 主に金属です。カバー部分はステンレスで、あとは銅と亜鉛を混ぜた真ちゅうやプラスチックなどです。

――ハーモニカは金管楽器ですか

 いいえ。吹奏楽器ではあるけれど、金管ではありません。リード楽器です。リードとは、空気の振動を起こすための弁のことで、クラリネットとかサクソフォーンが有名ですね。形は違いますが、大きなくくりとしては同じ仲間です。フリーリードというリードを使う楽器で、アコーディオンもこの仲間です。

――楽器作りで大変なところは何ですか

 音の調整です。ハーモニカのリードは真ちゅうでできています。厚さ0.3ミリのリードを、機械の特殊な刃で0.01ミリずつ削って調整します。息を吹き込んだり吸ったりするたびにこのリードが振動して音を出すというしくみです。リードを薄くすると高くなります。音を聞きながらこまかな音程(ピッチ)の調整をしていきます。最後に調律もします。

「ゆず」や長渕剛も愛用!

――どんなミュージシャンが使っていますか

 世界で一番有名なハーモニカ奏者と言われるリー・オスカーさんが使っています。知らないかな。有名どころならミック・ジャガー。「ゆず」や長渕剛もわが社の楽器を使っています。

――上手にふくコツは

 練習するしかありません。

――真野さんにとってハーモニカの魅力は何ですか

 ハーモニカは簡単な楽器なんです。ちゃんと音楽をやってきていない人でも、おじいちゃんでもおばあちゃんでも吹けば音が出る楽器です。適当にくわえて息を吸ってはくだけで、複数の音が出る。そこがとてもいいところです。

――ハーモニカはどんなところで使われていますか

 バンドの中で伴奏することもあれば、メロディーを吹く場合もあります。低音が出るバスハーモニカと一緒にアンサンブルをすることもあります。いろんな楽しみ方があります。さあ、みんなで吹いてみましょう!

トンボ楽器製作所

日暮里ショールーム

〒116-0013 荒川区西日暮里2-37-22

TEL 03-3802-2105

営業時間/10:30~19:00

定休日/日曜日・祝祭日

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