JIBUNマガジン

2017年08月号 vol.25

【ひと】東京産の和紙の魅力を広める伝道師/東京和紙の篠田佳穂さん

2017年08月07日 22:40 by Takako-Oikawa

 「楮(こうぞ)の皮で、綱引きしてみましょうか」。えっ? 楮って、紙の原料の? 破れるでしょう?・・・。恐る恐る、引っ張ってみると、びくともしない。男性が引っ張っても切れない。「これぐらい、和紙って強いんですよ」。一般社団法人東京和紙事務局長の篠田佳穂さんは笑顔で言う。

和紙を食べる??

 東京和紙は、和紙の原料栽培や紙漉き、製品デザインなどをやっている女性3人で2016年9月に立ち上げた。

 「作る」「育てる」「食す」「楽しむ」の4つの観点から活動をしている。和紙を作って販売する、楮など和紙の原料となる植物の苗を売って育てる、ワークショップで楽しむ、というのはわかるが、食す、とは?

 「楮や、紙すきの時に使うトロロアオイは茎や根が原料で葉は使いません。そこでお茶にしたり、ジェノベーゼ風のソースにしたり、和紙自体もマドレーヌにしたり。いろんなアイデアで食しています」

 市販の和紙は、化学薬品を使って漂白していたり、原料に古紙などが使用されていたり、機械で製造していたりするので、食べることはできない。東京和紙は、原料も主に自分達で農薬などを使わずに育てているものを使い、化学薬品などを一切使わず、手漉きで製造している。作り手も手にする人たちも含めて「安心・安全」をモットーとしているからこそ、漉いた和紙そのものを食べることができるという。

 ワークショップもユニークだ。7月は浅草神社でなんとおみくじ入りの和紙漉き体験会を実施。御朱印帳を和紙で作ってから、山の手七福神巡りをするという一日がかりのワークショップも開催した。ほかんもトロロアオイの畑作業と組み合わせた紙漉き体験、浅草かっぱ橋のお箸屋さんで和紙茶や和菓子を食す体験など、他にはないメニューが並ぶ。外国人にも人気だそうだ。

ご先祖様も和紙にゆかり

 篠田さんは荒川区在住で、7回、職を転々とした。映像関係やイベント会社などを経て、手に職をつけたいと思い、パッケージデザインの会社へ。袋の設計などをする中で、和紙に出合った。風合いの魅力と奥深さに取りつかれ、職人でない者が何をできるか考えたとき、和紙の魅力を伝える役割を担おうと思ったという。

 「実はご先祖様も和紙にかかわる仕事をしておりまして」

 祖父が長野県飯田市で水引の問屋をしていたという。水引は、のし袋などに巻いてある金色や白等の紐状のもの。この芯は、和紙でできている。祖父が急死したため廃業してしまったが、思いを継いでいきたいと考えたそうだ。

 「昔からやってきたことを続けたい。0にしないため、1を保ち続ける。後世につなげていきたい」と篠田さん。

 

「冷やかし」は浅草から?

 そもそも、なぜ東京和紙?

 「和紙といえばみなさん、秩父や美濃、石州などの地方を思い浮かべるでしょう。でも東京は浅草でも紙漉きをやっていたんです。それを知ってもらいたくて」

 浅草では、使い古した古紙を再生して和紙にしていた歴史があるという。江戸時代、浅草山谷や千住近辺から出てきた古紙を、浅草寺雷門前西あたりで漉いていたらしい。「落語の『蛙の女郎買い』や『紙屑屋』にも登場します。『冷やかし』は浅草紙が由来らしいです」

 古紙再生には、使い古した紙を一昼夜水に浸けておかなければならない。その間ヒマなので、職人たちは吉原の遊郭に繰り出す。でもお金がないので遊べず、おいらんを見て時間をつぶすだけ。それを指して「また冷やかしが来やがった」と言われたのが語源だという説があるという。

 いずれにしても、東京で和紙を作っていたということを伝えたい。「Made in Japanでなく、Made in Tokyoはないのか、という問い合わせも多いのです」。東京和紙では、あきる野市で育てた原料を使い、漂白も水に長時間さらすという昔ながらの方法で、すべて自然の力で作ることをモットーにしている。

 篠田さんによれば、江戸時代は文京区内でも紙漉きが行われていたという。場所は音羽。たくさんの紙漉き場が軒を連ね、和紙づくりが盛んだったようだ。「文京区でも原料を育てて和紙を漉けるといいですね」

 

異業種コラボも

 和紙を使った製品もいろいろ開発しており、うちわやはがきなどだけでなく、ストールや巾着、アクセサリー類なども作っている。

 事務所を台東区入谷のシェアアトリエrebootにしたことから、異業種コラボも生まれた。rebootは音出し可能、においが出る作業も大丈夫、製造許可のあるキッチンがあるので菓子などの製造もできるという特徴のあるシェアアトリエで、コワーキングスペースもある。「登記簿上必要だったし、打ち合わせなどにも使える。でも事務所にお金をかけたくなかった」と、rebootを利用し始めた篠田さん。実は楮などの原料の保管庫に困っていたが、ちょうどrebootのキッチンにある冷蔵庫が保管庫にピッタリということで、活用している。

 また、rebootのブーススペースを借りている人形作家とのコラボで、人形の顔に和紙を使うことになった。

 「今後も和紙のいろんな活用法を考えていきたいと思います」

和紙やイベントなどについての問い合わせは

一般社団法人 東京和紙

Facebookページ

メール:tokyowashi23k26s5ma8m@gmail.com

 

≪参考:和紙の作り方≫

楮を蒸して木の皮をはぎ、表皮などを取った「白皮」を3時間、にがりを入れてぐつぐつ煮たのち、たたいて繊維を細かくほぐして水に入れて漉く。水だけでは繊維が下に沈んでしまうので、トロロアオイの根をたたいた作ったねばねばした溶液(ネリ)を入れてかき混ぜ、水中に繊維を浮遊させる。木枠に挟んだ簀(す)ですくい上げて平らに敷き延ばし、干して完成だ。

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