JIBUNマガジン 文京区

2023年09月号 vol.98

クラフトビールめぐり⑥文京区→島根県益田市Iターン女性が挑戦、高津川リバービア

2024年03月17日 13:38 by Takako-Oikawa
2024年03月17日 13:38 by Takako-Oikawa

文京区から島根県益田市に移住し、クラフトビールを作り始めた女性がいる。上床(うわとこ)絵理さん。福岡市出身で、大学卒業後、文京区に住み、会計検査院に勤務する国家公務員だった。8月に伝通院で開かれた「思い出横丁in傳通院」で、自社「高津川リバービア」の「RIVER CRAFT」ブランドのクラフトビールを販売していた。「ビールづくりにチャレンジして、大好きな文京区に帰ってきてみなさんに飲んでもらえるのが不思議」と話す。



もともと、お酒もビールも大好きだった。「お酒を飲むとコミュニケーションが促進されますし」。死ぬまでに自分が好きなビールを作りたい、というのが夢だった。文京区内では本駒込、西片、千石、小石川、白山と、いろんなところに住み、文京区ファンでもあった。2016年には、退職後の孤立を防ぎ、再就職や活躍ができるよう支援するNPOを設立し、地域活動もしていた。

一方で、2018年、文京区と協定を結んでいる島根県津和野町と隣の益田市を訪れ、「いいところだなと思った。役場の人たちと密に話して、友達のような人もできたし」。定住者でもない、観光客でもない、「関係人口」となり、知り合いが増えた。そんななか、津和野町から益田市へ流れる高津川の清流がビールづくりにいいのでは、と教えられた。その清流沿いにある益田市の高津地区に、築160年以上の旧料亭があるという。「関係人口の仲間で、東京在住のデザイン会社の社長さんが、一緒にやる?と声をかけてくれて」

夢に向けて踏み出す時かもしれない――。30代半ば、勤め人生活は「もういいな、と思った。働く時間と場所を自由にしたかった」と上床さん。決まった時間に出勤し、そこにいなければならず、残業もある、という生活に区切りをつけたいと思った。2019年に退職し、2020年に親戚もだれもいない益田市にIターン。島根県内の醸造所で研修を受け、同時期にIターン移住した醸造士(ブルワー)の辻美孝さんと共に、2021年からクラフトビールづくりに取り組んでいる。

「地域の食材ありきで、どのビアスタイルが合うか、2人で相談しながら作っています」。阿武キウイセゾン、レモングラスAPA、まめ茶ブラック、和紅茶アンバー。。。名前からそれが読み取れる。香りが高い樹木クロモジと、フランス生まれのビアスタイル「ビエール・ド・ギャルド」を組み合わせたクロモジギャルドは、インターナショナルビアカップ2021で銀賞を受賞した。地元農家からの提案もあり、様々な地域の農産物を使ってビールを醸造している。「たくさんのビールを飲んできた経験が生かされてます」という。「地元の人に飲んでいただいてなんぼだと思うので」、苦味が少なめのベルギー系やドイツ系のビアスタイルが多いとか。「きれいで飲みやすい、をめざしています」

退職者の再就職支援活動もしてきたことから、近所に住む60歳以上の2人を雇用している。醸造所の近くには、「クラフト酒場高角(たかつの)」があり、立ち飲みができ、イベントも開いている。「豊かな自然とゆとりある時間。好きなビールを自分で作って飲みながら仕事ができる。移住してよかった。プライベートも仕事も充実している」と上床さん。酒場はいわゆる角打ちで、猪肉ジャーキーといったジビエ、高津川のアユの串焼きなどを提供する。中には「社長の唐揚げ」というのも。「私がつくった唐揚げがスタッフに好評で、出そうという話になって」と笑う。地域の人が応援してくれるのが大きな力になっているという。

オンラインショップがあり、ビールを販売している。オリジナルビールの委託醸造も引き受けているという。詳細はサイトで。(敬)

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