JIBUNマガジン 文京区

2024年03月号 vol.104

クラフトビールめぐり⑧「ビール天国」ポートランドで知った「文化」を地元にも/茗荷谷のWEDGE

2024年03月31日 09:57 by Takako-Oikawa
2024年03月31日 09:57 by Takako-Oikawa

アメリカ・ポートランドは「ビール天国」だそうだ。マイクロブルワリー(小規模醸造所)が街中にたくさんあるという。1人でしっぽり飲むもよし。パソコンで仕事しながらでも、みんなでわいわいおしゃべりしながらでも。散歩のついでに、買い物のついでに、昼間から1杯。そんなクラフトビールカルチャーに触れた平松美幸さんが、コロナ禍開けやらぬ2021年10月に、茗荷谷駅前にクラフトビールとピザの店「WEDGE」を開いた。「クラフトビールを知るとおいしいし楽しい。まちの魅力も上がるのではないかと思って」

店内にはタップ(ビール樽につながった注ぎ口)が10あり、国内外からセレクトしたクラフトビールの生が飲める。ガラスケースには、国内外のブルワリーが作っている缶やボトルのクラフトビールが、約200種ずらりと並ぶ。店内で飲んでもよし、買って家で飲んでもよし。ビールと相性のよいピザも提供している。平日の夕方訪れると、1人客もいれば、仕事帰りらしき夫婦が小さい子連れで飲んでいたり、ちょっとひっかけに来たような友人同士がいたり。外にも小さなテーブルとイスがあるので、犬の散歩途中にちょっと立ち寄ることも可能だ。

平松さんは窪町小、第一中学校を出た文京区育ち。高校時代に留学したのがアメリカ・ポートランドで、日本の両親が訪ねてきたとき、まず父がポートランドのマイクロブルワリーのクラフトビールにはまったという。ちょうど、アメリカでクラフトビールがブームになってきたころだった。大学卒業後の就職先はポートランドに本社を置くアウトドアメーカーだったため、ちょくちょく行っては飲み歩き、日本国内で当時地ビールと言われたクラフトビールも飲み歩いてきた。

順調に会社員としてのキャリアを積んでいたが、自身の将来展望を考える余裕もない多忙な日々の中、このまま会社組織で働くのでよいのかと思い始め、「とりあえず辞めてリセットしよう」と退職を決意。飲食が好きだったので、フードコーディネーターの学校に通ってみた。その授業の一環で、お店を出すプランを考える機会があり、発表したら好評だったため、これを本格的に検討しようと事業計画を詰めた。そして2015年11月にオープンしたのが渋谷のPDXタップルーム。PDXとはポートランドの都市(空港)コードで、タップルームはビール専門のバーの意味。ポートランドのビールに特化したビアバーだ。ポートランドに行ったり住んだりしたことがある日本人や、在住外国人、ポートランドから来た旅行者などが飲みに来てくれて、順調な滑り出しだった。

2店目を考えていたころに来たのがコロナ禍。やめることも考えたが、自分はいったい何のために事業を始めたのか、思い返した。「根底に、クラフトビールは楽しくていいもので、紹介したい、という情熱があった。ぶれないコンセプトがあった」。渋谷などの繁華街はゴーストタウンになっていたが、住宅街には人が流れていた。「繁華街に1店あるから、今度は住宅街に出そう」。見ず知らずの土地より、生まれ育った場所の方がやりやすい。そう考えて物件を探し、WEDGE開店にこぎつけた。

クラフトビールは素材も種類も無限というぐらいある。「自分の考え方で作れる自由度の高い型にはまらない飲み物。味わって感想を言い合う楽しみもある」と平松さん。主な材料はモルト、ホップ、酵母、水。モルトの焙煎状態で、浅煎りはラガー、深煎りはポーター(黒)と呼ばれる。酵母の発酵は上面と下面があり、上面発酵がエールビール。ホップの香りと繊細な苦味のペールエール、苦みが強いIPA、小麦を使ったヴァイツェン、どっしりした黒ビールのポーターやスタウト、下面発酵はラガーやピルスナー。。。これら「スタイル」の説明だけでもうおなかいっぱい。さらに派生したスタイルがたくさんあるとか。

初心者のおすすめはどのスタイルだろう。「最初はペールエールが入りやすいかも。そこから苦い方がよいとか、香りが高い方がいいとか、いろいろ試してみては」。ちなみに、日本の大手メーカーが作っているビールのスタイルは主にラガーだ。クラフトビールでは、乳酸菌や野生酵母を使ったり、フルーツを使ったり、ユズや酒粕やサンショウのような香りの強いものを使ったり、本当になんでもありの世界なので、味わいもさまざま。「楽しみ方にも正解はないのです。ビールは自分が思ったこと、感じたことが正解。1杯のビールで、いろいろ語り合ってもらえたらうれしいです」(敬)

WEDGE(文京区大塚1-1-13、TEL:03-5810-1611)instagram  facebook

営業時間:月~金 15:00-23:00、土 12:00-23:00、日 12:00-21:00(変更の場合もあるため要確認)

 

関連記事

ノンアルクラフトビールを試作中!土日に加え、木曜夜に角打ち会も/上野桜木・自然派ワインの店「inclus(アンクリュ)wine&brewing」

2024年04月号 vol.105

ブルーを身につけて東京駅からスカイツリーまで完歩!「自由×モビリティ」テーマに、自閉症や発達障害啓発の「ブルーウォーキング」

2024年04月号 vol.105

ありのまま、その人らしく。小さい子も、障がいのある人も、お年寄りと共に/「52間の縁側のいしいさん家」を見てきた

2024年03月号 vol.104

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2024年04月号 vol.105

春がしばらく足踏みし、桜の開花が少し遅れたと思ったら一気に暖かくなり、ツツジも…

2024年02月号 vol.103

節分の豆まきは今年は4年ぶりというところが多かったようです。節分、立春といえど…

2024年01月号 vol.102

2024年が明けました。今年もよろしくお願いします。クリスマスもお正月も終わっ…