JIBUNマガジン 文京区

2023年07月号 vol.96

気まぐれ探訪番外・四国編②牧野富太郎博士の息吹に触れようと、高知の牧野植物園へ

2023年07月16日 01:31 by inaba_yoko
2023年07月16日 01:31 by inaba_yoko

四国・内子の旅の次に高速バスで向かったのは高知。目的地は「牧野植物園」だ。高知駅のバスターミナルを降りると、至る所に日本植物学の父、牧野富太郎関連の大きなポスターが貼られていた。植物園には、市内の観光巡回バスに乗って20分くらいだ。

2021年の9月に東京練馬区の「牧野記念庭園」を取材(記事はこちら)、今年5月は小石川植物園のミニ企画展「牧野富太郎と小石川植物園」(記事はこちら)を取材する中で、どうしても牧野博士の出身地、高知にある「牧野植物園」に行ってみたくなったのだ。

「植物園を造るなら五台山がええ」。90歳を超えた牧野博士のこの一言で、牧野植物園は五台山に1958(昭和33)年に開園した。博士は土佐への切なる思いを持っていて植物園ができるのを楽しみにしていたというが、残念ながらその前年に亡くなっており、開園を見られなかったようだ。

正門前バス停から石の看板を通って道を歩いていくと、まだ入口の手前なのに、道の両側に植物がいっぱい。植えたというより、山をそのまま整備したようだ。関東のローム層と違い、じめじめしていなくて、栄養豊富な感じの茶色い土で、木々も草花色みな色鮮やかだ。こんな土地に生まれ育ったら、植物好きになる人が多いのではないかと思う。

NHK朝ドラ、「らんまん」に出てくる草木もそこここに群生しているのが見られ、そのひとつひとつに「らんまん」のマーク付きで説明書きがしてある。「ヒゴスミレ」「ビロードムラサキ」「バイカオウレン」「ヤマトグサ」「タイトゴメ」「ギンバイソウ」「セントウソウ」「ユキモチソウ」などなど。

テレビの影響で、訪れる人も多く、入口はかなり長い列となっていた。入口までの植物を見て、「これ、見たからいいか」と言って入口を通らず、Uターンして帰っていってしまう家族の姿も。確かに、入口に辿り着く前に十分満足してしまうくらい植物がびっしりだ。

広さは8ヘクタールある。牧野富太郎記念館や土佐の植物生態園、薬用植物区などがある北園と、ジャングルゾーンがある大きな温室などがある南園に分かれている。なにしろ五台山のほとんどが植物園かと思えるほどなので、どこへ行くにも山道(石段になっているところもある)を上ったり下りたりしなければならないのがとても大変。しかしこれだけ広いところに、これほどたくさんの種類の植物を見る機会を逃してはもったいないと思う。

「牧野富太郎記念館展示館」では、幼少期からの晩年に至るまでの資料が丁寧に展示されていて、牧野の人となりを余すところなく伝えていた。

展示はもちろんだが、植物園のすべてに高知の人たちの牧野富太郎への温かい思いが感じられた。「牧野富太郎ゆかりの地めぐりマップ」や「牧野富太郎/植物とともに過ごした94年の生涯」といったパンフレットがあり、どれも大事に丁寧に編集されている。「牧野富太郎の息吹に触れる主なスポット」は、牧野植物園のほかに生まれ故郷佐川町の「牧野富太郎ふるさと館」「横倉山自然の森博物館」もあるようだ。横倉山は富太郎の植物観察のフィールドだったという。別のパンフレットに「国内の牧野富太郎ゆかりのスポット」として「東京都立大学牧野標本館」「六甲高山植物園」も紹介されている。

佐川や横倉山に寄ることが出来なかったのは痛恨の極みだが、次なる取材は六甲か都立大学か。楽しみになっている。(稲葉洋子)

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