JIBUNマガジン 文京区

2019年07月号 vol.48

ロボット作りでプログラミングも科学技術もリーダーシップも/谷中テックアカデミー

2019年07月05日 00:20 by inaba_yoko
2019年07月05日 00:20 by inaba_yoko

小学校でも、プログラミングの授業が始まるそうだが、谷中でプログラミングの教室が2018年12月にスタートしたと聞いて、さっそく取材のお願いをした。お願いはしたものの、今あちこちで最先端の話題となっているプログラミングというものがまったくわからない。取材時に若者の同伴をお願いしようとしたが、教室主宰の橘茂生さんの「大丈夫、わからなくても。僕だって教室をやりながら学習しているんですから」という言葉に励まされて、単身、谷中2丁目にある「谷中テックアカデミー」を訪れた。

橘さんは谷中に引っ越してきてから15年目になる。グラフィックデザインを中心に、ホームページ制作や映像制作が本業だが、そのかたわら、「谷中テックアカデミー」を開設した。

「もともと、息子の少年サッカーでレフリーをやっていた経験を買われ、ロボットの競技大会のレフリーをボランティアで手伝ったのがきっかけ。『VEXとSTEM』(※ロボット作りからScience, Technology, Engineering, Mathematicsを学ぶ)という分野を知りました。輸入教材の『VEXIQ』は小3~中2までの生徒と先生のためのSTEMラーニング教材で、工具を使わずにロボットを作ることができるものです」と橘さん。「普段教室や運動場では今イチ輝けない子や、不登校の子など、さまざまな環境で育つ子どもたちの選択肢の一つとして、ロボティクス、プログラミングがあってよい」と思い、妻が営むレンタルスタジオを格安で貸してもらってスタートした。谷中にはそのような教室があまり見当たらず、ニーズがあると思ったそうだ。

教室に来ている子どもたちは小学4年生から6年生までの男の子3人。3人とも一生懸命、床やテーブルに無造作に置かれたプラスティックの部品を使い、モノ作りに取り組んでいる。真剣にというよりも楽しそうに遊びながら、しかも集中していた。

何を作っているのだろうか。

「ロボットを作っています。作っている間に、ギアの仕組みや大事なことを話していきます」と橘さん。プログラミングはロボット作りをする中で必要に応じて教えられている。

「Robotics Education & Competition」という団体が企画する、年数回のロボコン大会に出場する。最終的に世界大会があるが、60カ国2万人が参加しており、日本からは4チーム参加することになっていて、そこを目指したいという。子どもたちは、うまくいったり失敗したりしながらどうやってパワーのあるロボットを作るか、試行錯誤するわけだが、1年間取り組むことでいろいろな気づきがあり、優れたロボットに改良されていく。競技を目標にロボットを作っていくことは、世界中の子どもたちと共に日夜腕を磨いていることになる。

「競技では、ロボットがボールを持ち上げてキューブに入れる、そのボールの数を競うのですが、個人競技ではなく、ひと組2人以上のチームで出場します。この競技は、チームワークチャレンジと呼ばれ、試合当日に2つのチームがマッチングされます。キューブに数多くのボールを正確に入れて高得点を得るためには、お互いのロボットの特徴を知るなど迅速なコミュニケーション能力が求められます」。ボールを持つのが得意なロボット、キューブの性能がよいロボットなど、すぐにお互いを把握し、成果を出す、その戦略は子どもたちに委ねられているという。

成果を出すには有効なチームを作る力が必要なのだ。「チームにはいろいろな役割があって、技術に秀でた人材や音頭をとって自己管理ができるチームに育てるリーダー、競技のルールを把握し、競技中、審判にルールから外れているチームに対してのクレームを言っていくクレーム係なども必要です。役割分担して有効に成果を出す力が必要」と橘さんは言う。

ハードスキルとしてロボティクスとプログラミングを学び、チームで動くことにより、ソフトスキルとしてコミュニケーション力、リーダーシップ、課題解決力を身につけていく。「この教室の目的は、ロボット作りだけではなく、ソフトスキルを身につけることなんです」と橘さん。「ロボットの自動運転などはプログラムを組み込むことが必要ですが、子どもたちが作りたいモノを作る過程の中で、必要に応じてプログラミングを教えていく」とのことだ。

子どもたちは、橘さんをコーチと呼ぶ。

「コーチ、アームが片方動かないけどどうしたらいい?」「アームを動かすモーターは消耗品なのであまり負担はかけない設計にしないと…モーターが働かなくなるとその都度取り寄せないといけないんだ」「難しいところを最初に作らないと。いきあたりばったりだと作り直しが必要になったりするよ」

橘さんは丁寧に答えたりアドバイスしたりする。「コーチは器用なんですか?」と子どもたちの1人が質問すると「ちょっとだけ君たちより経験があるといったところかな」とにっこり。

これからの時代を切り拓いていくのは、今を生きる子どもたちだが、引き継がれていく課題は、複雑化している。問題を論理的に捉える力を持ち、課題を解決する方法を学び、実際経験していく必要がある。現在プログラミングがわかるエンジニアが日本に70万人足りないと言われている。「子どもたちには理数工学に対する興味を早い時期から持ってもらい、国際的な競技大会を通じて、チームワーク、コミュニケーション、グローバリズム、リーダーシップ、課題解決力、プロジェクト遂行力を育んでいきたい」。まずは、8月末にある神奈川のロボコン大会に向けて、ロボット作りに取り組んでいるところだ。(稲葉洋子)

橘 茂生さん プロフィール

谷中テックアカデミー主宰/デザイナー/クリエイティブディレクター

1971年東京出身。グラフィックデザイン、WEBサイト開発、アニメ制作などの仕事に従事、4児の父、小学校のPTA活動や少年サッカーのコーチングなどの経験から、地域から世界へ羽ばたくエンジニアを育てるスクールを谷中地域でスタート、Vex IQチャレンジ大会公式レフリー。

参加お問い合わせ Eメール info@tech-yanaka.com

                           TEL  090 6042 5927(橘)

 

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