JIBUNマガジン

2018年07月号 vol.36

天野亨さんのリアル。「ともに」の心地よさを感じた

2018年07月04日 22:19 by takegata

 原稿が遅いどころか、最近は滅多に文章が書けていない竹形です。文京社会福祉士会の平成30年度第一回勉強会が6月20日水曜日の19時からフミコムで開催され、最近仲良しの天野さんがお話をされるというので参加してきました。

 天野さんは子どもの頃に視力を失い、全盲者として初めて国立音楽大学の声楽科に入学、卒業し、音楽家として、またバリアフリーのエバンジェリストとして活動されている方です。この勉強会がとても良かったので頑張って書きます。

 私が天野さんと初めてお会いしたのは去年の秋でありまして、天野さんが企画された栃木県足利市のココ・ファーム・ワイナリーを訪れるバスツアーに参加したのでした。その後、ボランティア祭りのB-ぐる友の会ブースに立ち寄っていただいたり、展望ラウンジの夜景バーでばったりお会いしたり、最近は私の事務所で開催している「まちライブラリー」(というか、その後の飲み会!笑)に来ていただいたりという感じで、ちょくちょく楽しいお話などさせてもらっています。

 勉強会では、天野さんのファシリテーションで「目が見えないと何に困るか」ということについてみんなで話し合いました。

 参加者からは「時間が分からないのではないか」とか「文字が読めない/書けないのではないか」などいろいろな項目が挙げられましたが、目が見えなくても、道具を使ったり時間をかけたりすれば、結構いろいろなことができるのですね。

 たとえば、天野さんは左手に腕時計をされているのですが、どうやって時間を見るのだろうと思っていたところ、右手で瞬時にカバーガラスを開けて針に触れてカバーを閉じるのです。これには驚きました。

 また、印刷物の文字はスマートホンで写真に撮ると文字を認識して読み上げるアプリがありますし、普通に写真を撮るとデータをクラウドに送って何が写っているかを声で教えてくれる(写っているものを見てタイプする所は人力だそうです!)アプリなどもあるそうです。このような便利なものがある一方で、まだまだ改善されずに放置されていることや、もう少しの工夫で改善できるのにと思われることなどもありました。

 目の見えない人にとっては点字も大事なコミュニケーションツールですね。会場には天野さん愛用の点字ワープロを持ってきていただきました。最近ではスマートホンで文字を音声に変換できるようになってきたこともあり、点字の利用はだんだん少なくなってきているとのことですが、天野さんは点字という文化を残すことに意味があると考えているそうで、点字翻訳や名刺への刻印を仕事として請け負っているそうです。確かにスマホで音声に変換できればわざわざ点字を覚えなくても良いわけですけど、世の中には目が見えないだけでなく、耳も聞こえないという人がいるのですよね。そういう人にとって点字はまだまだ重要ではないかと思います。

 たまたま偶然ですが、私が若い頃に楽譜を点字に翻訳するコンピュータのソフトウェアを作ったことがあり、その話を天野さんとできて、ちょっと嬉しかったりしました。

 あと、面白いなと思ったのは、オセロですね。裏と表に異なる凹凸の模様が刻まれていて、手で触ると裏表が分かるようになっています。これと似たものを3月に国立新美術館で開かれた「ここから2-障害・感覚・共生を考える8日間」という展覧会で見たのですが、こちらは模様と色がわざとちぐはぐ(半分が黒で半分が白など)になっていて、目が見えているとかえってプレイするのが難しいというものでした。私はこういう不条理なアート作品がわりと好きだったりします(笑)。

 そして、天野さんといえば盲導犬ですね。今年の1月に長年連れ添った人気のクラウスが引退して、新しくファラドがパートナーになりました(クラウスは里親さんと一緒に元気に暮らしているそうです)。そのファラドも勉強会に来ていて、天野さんをエスコートする様子を実演してくれました。

 盲導犬への指示は英語でするように訓練されているとのことで、Go! と言うと歩き始め、Stop!で止まります。ところが、天野さんがGo!と指示してもファラドが進まない場面がありました。天野さんは参加者の椅子の間の狭い所を通ろうとしているのですが、ファラドは天野さんが通れないと判断していたようです。判断の基準は「自分が通れるかどうか」ではないのですね。とても賢いと思いました。トイレなどはどうするのかと聞いてみると、ベルトとレジ袋を工夫して室内でも対応できるようにしているのだそうです。

 他にもさまざまな話題が盛りだくさんな勉強会でした。この勉強会の少し前に、コラブルというNPOが主催した、障害のある人とそうでない人が共に生きることについて考えるイベントに参加して「ために、から、ともに」というキャッチフレーズが印象に残っていたのですが、この日も改めて「ともに」の心地よさを感じたことでありました。

(竹形誠司)

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