JIBUNマガジン 文京区

2022年12月号 vol.89

取材のご縁が「藍染おわら」や和胡弓教室に/「身近な素材で作る」原点で和楽器作り

2022年12月16日 03:22 by inaba_yoko
2022年12月16日 03:22 by inaba_yoko

夏に記事にした、ダンボールで作る三味線「しゃみせんBOX/SHABO(しゃぼ)」を取材するきっかけは、考案者の濱谷拓也さんが、「根津のあたりに、和胡弓の教室を開けるような場所はないか」と探していたことだった。「SHABO」は持ち歩いているだけで目を引いた。取材当時、谷根千のあたりは「芸工展2022/まちかど展覧会」や、根津・千駄木「下町まつり」の計画や準備が始まっており、ギャラリーも通りも、関係者がいっぱい。盆踊りの会の鈴木慎平さんも一緒に「SHABO」を宣伝して歩いていたら、藍染大通りで、芸工展のプログラムとして、新しいイベントが生まれることになった。

富山なら、三味線・胡弓ときて、踊りが入れば、「おわら風の盆」。そこで、小さなおわら風の盆のようなまつり、「藍染おわら」を10月23日に藍染大通りで藍染町会の協力のもとに開催することになったのだ。ダンボールのSHABOと胡弓を、地域のサロン「アイソメ」で作り、大通りで輪になってみんなで演奏、スタートとエンディングでは、三味線、胡弓の生演奏を真ん中に、踊り手がその周りに輪を作って踊った。ワークショップで作った楽器での演奏参加は、今年はまだなかったが、いつかそんな演奏が出てくるのではないか。

参加は150人以上。濱谷さんは、当日は楽器作り講師となり、踊りの時は三味線の見事な演奏者、また、和胡弓の教室の講師をしている舘谷美里さんは、作った楽器の演奏を指導、そして踊りの名手だった。地域からはもちろん、富山から、都内の県人会からの参加があった。子どもたちは、楽器作りの時はたくさん参加して、以前作ったSHABOを持参する子もいた。

「藍染おわら」を振り返って濱谷さんは言う。「盆踊りはいろいろなところでやってますけど、やっぱり生演奏を囲んでやるというのは、醍醐味ですよね」。演奏者も踊り手も富山から大勢来ていた。「テープに踊りを合わせるのではなく、踊りに演奏が合わせていく一体感がいいですよね」。そして、「おわらはゆったりと踊るので、幅広い年代の人が楽しめて、それが、人と人とをつなげる」という。できれば、この先も定期的に「藍染おわら」を続けたいと思っているという。「本当に純粋におわらが好きな人が集まる場に。どこの誰でも参加しやすい形にしたい」と語る。「おわらはおわらでイベントでやっていければ、そこには、三味線も胡弓もあるのだし、いつか両者はつながると思います」

濱谷さんが場所を探していた和胡弓教室は、千駄木の「狸坂文福亭」で定期的に開催されることになった。胡弓は立山杉で作っているという。

「『森の胡弓』という商品ですけど、日本橋の富山館という富山のアンテナショップで、最近まで陳列していました」。今、和楽器は、輸入した材料で作られているそうだ。「三味線は紅木や花梨で作られますが、それはインド産、日本の花梨だとやわらかいので海外の花梨を使っています。皮も今は日本で作らないし、糸もシルクではありますが、どこも蚕さんを飼ってないし、和楽器でありながら全部海外から輸入している」と笑う。

「江戸時代に遡れば、樫という堅い木を使ったり、皮だって身近に害になる動物がいたら、ちょいと捕まえて皮にしたりという発想をしていたはずが、今は材料の伝統を守るなんていう大義名分のもとに、海外から仕入れて作っている。ちょっとおかしいと思うわけです」

昔、身近にあったもので作ったらこういう形になったという発想の原点に戻って、「じゃあ今、身近なもので楽器を形作ってみよう」と、おわらの仲間といろいろしゃべったという。「それはSHABOだったらダンボールだったりするわけです」。胡弓も、身近な富山の立山杉で作って、「森の胡弓」という商品になった。音も従来のものより柔らかくどこか大陸的だという。

「藍染おわら」で和胡弓教室の生徒が増えたと、和胡弓の講師をしている舘谷さんは言う。月1回だった教室が今は2回になった。舘谷さんは踊りをやっていたので、胡弓の音は小さい時から耳にしていたという。演奏したのは、高校生の時。「三味線や胡弓を演奏する郷土芸能部に入っていて、胡弓に取り組んだのですが、きれいな音が出せず、一度投げました」と笑う。

濱谷さんが営む「しゃみせん楽家」に入社してから再び胡弓に取り組み、まだ5年だが、今では押しも押されぬ胡弓の名手となり、あちこちの演奏会でひっぱりだこだ。舘谷さんは言う。「私にとっては身近な胡弓が、ほかでは全然知られてないんだなと仕事を通してわかった。みなさん中国の二胡と勘違いするのです。だから自分が弾くことによって、胡弓を知ってもらいたいと思って。胡弓の音色は日本人に合っているんじゃないかな。もの悲しい、なつかしさがある旋律で、心をぎゅっとつかまれるような。そんな胡弓の音色が大好きです」

教室は見学もできる。問い合わせはしゃみせん楽家(富山市東岩瀬町303、TEL:076-471-5467)へ。

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