JIBUNマガジン 文京区

2022年05月号 vol.82

脚色!会議録「紙の地域誌を出したい!」

2022年05月23日 19:00 by Takako-Oikawa

皐月のある昼下がり、地域誌発行について話し合うため、まちについて熱い想いを持つ面々が集っていた。

Oはインターネットで情報発信を8年間やってきたが、手ごたえを感じていない。2021年夏に地域誌の展示イベントをやったことがきっかけで、紙媒体を出したい、と思うようになった。

明照幼稚園卒だという最高齢のIはやはりインターネットで情報発信をして8年になるが、「自分はデジタルでやっていく」と言う。「今なくなってしまったものでも、検索したらヒットするし、記録として残せるから。もちろん、紙で出せるならいいと思う。紙はなくならない」

若手建築家Sは「紙で発行する意味をはっきりさせないと。あれもこれもの内容じゃなくて。ほかの人がまねをしたくなるような画期的な地域誌とはどんなものだろう?」と辛口だ。

マシンガンのようにSが次々アイデアを打ち出してくる。

「まちを考えている人の生き様を語る内容というのは?」

「まちをよくするための企画会議の議事録を本にするとか」

「考現学みたいに、まちの『いま』をひたすら記録する」

「お祭りをつくり上げてくプロセスが楽しいように、何かの過程をみせるとか」

「『空』をしのぶ会を企画しては? 次の『空』とは何かを考える」

空(KUU)とは、2021年7月号で終刊した地域誌。もうじき発刊者だった方の一周忌だ。OやIが執筆者や広告を引き継いで発行を続けられないかともくろんだが、頓挫した。

「後継の地域誌の名前まで考えたんだけど。『風(FUU)』とか」とO。

「『地』はどう?地域の地」とS。

「読みがイマイチねえ。ちに点でぢ」

「おしりの病気だ。。。でも『風』って軽くない?ネットっぽい。流されてる」

「風を起こすとか、そういう意味も持たせられると思ったけど。。。」

話はまとまらない。

Sが言う。「なぜ紙媒体を発行したいの?」

「書き手のモチベーションとして、誰がどれぐらい読んでいるのか実感が必要だと思う。紙なら何部出した、というところで、何人に届いた、という実感がわくかも」と、コミュニティースペースを運営しているマルチクリエーターのTが言う。

 Oは考えた。「偶然の出会いがほしい、のかな」。ネットの情報は必要だと思う人にしかリーチしない。でも紙媒体は手にしたらそこに載っている記事を否応なく読むことになる。それが「偶然の出会い」だ。「それと、コミュニティーを作りたいから、かな」。言ってみたものの、地域誌を出すとコミュニティーができるのかどうか、Oは確信が持てないでいる。「みなさん、紙媒体を作るなら、何を書きたい?」。Oは話題を変えてみた。

 「文京区の野鳥図鑑。いま野鳥探しにはまっていて」とYが言う。Yは子ども劇場をはじめとする文化芸能活動に身を投じ、自ら紙芝居を上演したりしている超パワフルシニア女性だ。

 「出版社を取材してみたい」とT。

 Sは「何を書きたいかはわからないけど、魅力的な写真や図版が多く、パッと見きれいでないと」と言う。

 Iは「歴史的なものがいい。小石川植物園の江戸探しとか。実はこの石が、とかこの井戸が、とか」。

 年間で企画を考えて、今を記録するのはどうだろうか。「せっかく建物が建て替わったんだから、第一弾は共同印刷を取り上げてみては」とIが言う。

 「建て替え後、地域の人が利用できる場所ができなかったのは残念」とSがつぶやく。

 「歴史の長い会社って、カタイんだよね。取材、応じてくれるかなあ」。Oの言葉でなんとなく話が流れた。「1人の人を、複数の人が取材してそれぞれ異なる角度から書いてみるっていうのは?」

Oは書き方教室と称して、1人の人物を複数で取材した経験があり、それぞれの視点でその人に興味を持つことを知っておもしろいと感じた。「専門の違う10人が1人の人を書くとか?」とSも乗ってきた。

「『船橋人物図鑑』というのがあるよ。人物のインタビュー集。書かれる人がお金を出すんだけど」。読書家のTが言う。「書かれる人がお金を出すって、議員とかが書いてくれって言ってきそうだね。議員図鑑になっちゃうかも」とI。

 黄昏が迫ってきた。「リアルタイムの記録を、小説のごとく読めるものにするっていうのはどう? 企画会議が本になるとか。小説を書いていくように、記事を書く」。突然ひらめいたようにSが言った。Tが「『ダブリン市民』って知ってる?しょうもない人の日常を淡々と書く小説なんだけど」。Yが「知ってる知ってる。あの本おもしろいですよね」。

 話はまとまるようでまとまらず拡散を続けた。「じゃあ、考えときます」で、お開き。

(つづく)

(つづかないかも)

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