JIBUNマガジン

2021年09月号 vol.74

ビッグデータやネットの時代にこそ、ご近所のマイクロな話を/駒込を愛する人の「こまごめ通信」

2021年09月16日 20:53 by Takako-Oikawa

「小林さんはロックだ」。そんな書き出しから始まる記事が、「こまごめ通信」創刊号の冒頭を飾る。「あまりにも内輪すぎて大丈夫かなと心配したけど、狭い町の小さなことがむしろ親近感があったのかなと思う」。編集人で漫画家の織田博子さんは言う。「この店のこのメニューが私は好きだ」という「個人的な話」をつづるのは、こまごめ通信の特徴ともいえる。この2年間変わっていない。

駒込は文京区と豊島区と北区の境界が交わるまち。「山手線で降りたことがない駅No1」に選ばれたこともある地味なまちだ。創刊のきっかけは、駅北口の霜降銀座商店街にある「百塔珈琲Shimofuri」元店長のしば田ゆきさんが織田さんに声をかけたことだった。店にはもともと個性的な客が集まっており、2017年、ある洋菓子店が閉店し、みんなでそこのお菓子を食べようという会が開かれ、「駒込を楽しみ隊」の原型となるコミュニティができていた。2019年4月、とりあえず出してみようと、駒込を楽しみ隊による、駒込を愛する人のためのコミュニティペーパー、こまごめ通信が誕生した。A5版裏表のシンプルな作りだが、300部ぐらい出したらすぐ反響があり、記事を載せたい、書きたいという声が次々にあがった。毎月出せそうだねということになり、月刊になったという。

第1号発行後、駒込を楽しみ隊の「オフ会」があり、そこに参加したのがくれまちこさん。駒込には7年ほど住んでいたが、地域との接点がないと感じていた。「記事を募集しているというのを真に受けて」商店街のお肉屋さんの記事を書いて持っていったら、そのまま第2号に掲載された。「おしゃれなカフェじゃなくて、肉屋をチョイスしたところが衝撃的でした」と織田さんとしば田さんは笑う。百塔珈琲という場所があって、こまごめ通信というメディアがあって、「読んでみたら」「書いてみたら」と客に薦める店長のしば田さんがいて、盛り上がっていった。

(左から織田さん、しば田さん、くれさん)

「駒込の人が駒込を面白がるのがいいかなと考えた」としば田さんは言う。「ビッグデータとかネットとかの次に面白いのは何かと考えた時、ネットで検索しても出てこないような情報の方が面白いなと思って」。しかもそれは手の届く範囲にしか届かない「もの」であることが大事だ。すなわち「紙」の媒体。「それが新しいことに思えた。ネットで大声で言うより、身近な人が面白がっていることが面白いのかと」

織田さんも「最初はピンとこなかったが、2年たって、個人的な話が『今』をとらえていると感じる。お隣さんが食べに行っている店、のようなマイクロさがよかった」と言う。第5号となる2019年8月号で、織田さんが描く三毛猫のゆるキャラ「こまゴメス」が登場。北区、豊島区、文京区の3つの文化がまじりあう駒込を三毛猫で表現した。「ゆるキャラがいると人がしゃべっている生々しさが打ち消せる」と織田さん。

北区の主催で記事を書くワークショップを開催したこともある。普段は30代の女性たちが編集しているこまごめ通信だが、参加者には50代60代の方もいたため、記事のバリエーションが広がった。くれさんは「年代や性別が違うと、まちの見えている景色が違う。いろんな人の視点があると面白くなると実感した」と話す。くれさんは「面白い人たちに駒込を離れてほしくない気持ちがある。応援しているから、離れないでというアピールのようなもの」。ゆくゆくは駒込で仕事をしたいと思っており、仕事をつくることに結び付くといいと考えている。「いつまでに何をする、と近視眼的にならないよう、細々と『信頼の貯金』をためながら、まずは続けていきたい」

記事執筆も編集も手弁当。カフェや商店に置いているが、「いつも作ってえらいわね」と言ってお小遣いをもらうこともあり、こまごめ通信ファンドや、定期購読も始めた。1年分をまとめた冊子も2巻を出しており、第1巻は800円、第2巻は500円で販売している。Facebookグループ「駒込を楽しみ隊」やこまゴメスのインスタグラムなどもあり、LINEスタンプやバッグなどの販売も。コミュニティ「駒込を楽しみ隊」では、オンライン会議やオフ会の中で出てきたアイデアが形となり、「こまごめビールプロジェクト」などが生まれた。「こうしたコミュニティの醸成が面白い」と織田さんは言う。この先もいろいろな広がりが期待できそうだ。(敬)

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