JIBUNマガジン

2021年09月号 vol.74

人形劇一筋の燕さんの芝居に子どもたちげゲラゲラ/子ども劇場荒川・台東・文京 文京ブロックが鑑賞活動

2021年09月18日 14:39 by inaba_yoko

人形芝居燕屋のくすのき燕さんが大きなカバンを手に舞台に登場。客席はすっと静まり、さあ、第1部の腹話術「ハロー!カンクロー」のはじまりはじまり。

「ぼくのともだちはね、カンクローといいます。中村って苗字じゃないですよ。ただのカンクロー。でね、このカンクローはさ、寝てばっかりいるんだよ」。燕さんが「カンクロー!」と呼びかける。「う…ん」「うんじゃないよ、起きて!」。カバンの中からカラフルな鳥のカンクローが登場。膝の上のカンクローはもう人形じゃなく生きている鳥だ。

 

ところがカンクローは客席にくるりと背を向けてしまい、燕さんが肩をたたく。「なに?」。カンクローが喋る。「恥ずかしいの!」。

「カンクロー、みんなに挨拶して!」「ん…さようなら!」「ちょっとちょっと、それは終わりのあいさつでしょ」

始まってすぐに客席のあちこちから、子どもたちのくすくす笑いが起こる。燕さんとカンクローのやりとりを聞きながら、子どもたちの笑い声はだんだん大きくなっていく。

第2部は、「さんまいのおふだ」。肩掛け人形芝居といい、室町時代から江戸時代まで行われていた芸能を現代に復活させたスタイルだ。肩から紐で掛けた舞台の上で、奇想天外なストーリーが繰り広げられる。この人形芝居のスタイルにどんな物語が合うか研究し、動きの多いものが向くと考え、民話を土台に「さんまいのおふだ」は作られた。上演して二十数年になるそうだ。

やまんばと小僧さんが逃げたり追いかけたり。最後は、やまんばが和尚さんに飲み込まれてしまう。こわい話ではなく、ハーモニカや布、木魚、番傘、団扇も使い、観客を巻き込んでの抱腹絶倒の芝居だ。子どもたちが椅子から転げ落ちそうになりながらげらげら笑っていた。

燕さんは、NPO法人日本ウニマ「国際人形劇連盟日本センター」会長、日本人形劇人協会会員、全国児童青少年演劇協議会会員、全国専門人形劇団協議会加盟(人形劇団燕屋として)など、たくさんの肩書を持つ。人形劇とは信州大学在学中に出あった。「やってみたら面白くって、台本を書いたらそれが通って、同級生と一緒にやるのも楽しかった」。就職をどうするか考えたが、もうちょっと人形劇のことを知りたいと思って、プークの人形劇アカデミーで本格的に学ぶ。「2年間のプロの養成課程で、深みにはまってしまいました」と笑う。

迷ったり、別の道に進みたくなったりしたことはなかったのだろうか。

「20代の時は、好きなことは30歳までやってみて、そこで適性や経済的なことも含めて決めればいいや」と考え、30歳になり「これでいい」と思った。が、35歳まで5年間のモラトリアム期間を設けた。そして「まあ、やれるかな」と続けることを決めたという。「確信なんてなく、もう乗り換えがきかない時期、この道を行くしかなかったですが、それは、ありがたいことだったと思っています」と振り返る。

出演・作・演出・制作・海外劇団の招聘など人形劇団の領域を幅広く手がける。自らの公演だけでなく、他劇団の演出も数多く、海外でも活躍。2009年6月、作・演出した「トライアングル」という作品が、チェコの「子どものための国際人形劇フェスティバル、『マテジンカ‘09』」で5歳以上の部門のグランプリに輝いたことも。この先、チェコのフェスティバルに招聘される話もある。チェコは人形劇大国だという。

来年2022年秋には、ハンガリーからレナート・オンドラシュ氏の招聘を予定している。演目は小品集「MIKROPODIUM(ミクロポディウム)」。レナートさんについては「めちゃくちゃうまいですよ。僕は世界でうまいなあと思う人何人かいるんですけど、彼は間違いなくそのうちのひとりです!」と胸を張る。「人形劇は視覚的な演劇です。観てわかるものを作りたい。言葉より動きや情景で伝えたいと考えています」と燕さん。「観客の創造力を必要とするもの、つまり、飾りこんだ立派な道具立てよりシンプルな道具で見せたい」

今回の公演の主催は、NPO法人子ども劇場 荒川・台東・文京 文京ブロック。区内に事務所を構えて初めての公演だった。文京ブロック代表の伊東静香さんは、「これから定期的に、文京区内で親子を対象とした舞台公演を企画していきます。『MIKROPODIUM』も取り組みたいと思っています」と話している。(文=稲葉洋子 写真=子ども劇場文京ブロック写真チーム)

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