JIBUNマガジン 文京区

2021年07月号 vol.72

写真と、私たちの日々のこと⑨美しい庭

2021年06月26日 15:44 by Takako-Oikawa
2021年06月26日 15:44 by Takako-Oikawa

「椿の庭」という映画を観ました。
もともと映画館で映画を観るのが好きで、多いときは週1ペースで映画館へ足を運んでいます。特にミニシアター系の映画が好みで、神楽坂にあるギンレイホールは年間会員になり、時間を見つけてはふらっと鑑賞。シネコンももちろんいいですが、こぢんまりとした劇場で観る映画は、何割り増しも良いものですね。余談ですが、だからこそ映画館が閉じていた間は文字通り「大切な文化を奪われた」気持ちになりました・・・。再開を心待ちにしていた一人です。

真っ暗な場所で2時間映画だけに集中できることは、常にto doがあるような自分にとっては(常にto doがある状態もどうかと思うのですが・・・)至福の時間であり、癒しの時間でもあります。結婚する前は、金曜日の仕事終わりに映画館に行くのがとてもしあわせでした。良い映画を観た帰り道は、自分の中身が入れ替わったような心地で。一人でふわふわとした気持ちで帰るとき、街がいつもより輝きを増して見えます。

――

「椿の庭」は、写真家上田義彦さんが監督・脚本・撮影を務められた作品です。多くの広告やCMを手がけている大御所写真家さんなので、写真好きじゃなくても上田さんのお写真を目にしたことは多いはず。

写真家が撮っているだけあって、作品はとても写真的で叙情的。一つの対象をじっと見つめさせることで、想像させ、考えさせる。静かでしっとりとしていて艶やかな映画。登場人物のセリフが最小限に抑えられ、一つ一つの描写にゆっくり、じっくりと焦点が合わさっています。上田監督が伝えたかったであろう写真の本質や美しさが丁寧に織り込まれていると感じました。

そして四季折々の自然がとても美しくて儚い。虫やカエル、金魚などのちいさな生き物たちがみずみずしく生きているさまも死んでしまうさまも、すべてが自然の一部。私たちもまたその一部だと感じられます。

シネスイッチ銀座で上映中です。

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タイトル通り美しい「椿の咲く庭」のある家が舞台となるこの映画ですが、映画を観ながら、岩手に住む祖母を重ねていました。89才になる私の祖母も、同じように庭の手入れをしながら一人で立派に暮らしています。庭の美しさの種類は異なるものの、自分の人生そのものである庭を、彼女も大切にしています。
早く会いたいなあ。

千葉愛子|Aiko Chiba

1990年宮城県仙台市生まれ。​東京都文京区在住のフォトグラファー。

WEB:https://www.aikochiba.com

Instagram:@chaiko2328

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