JIBUNマガジン

2019年02月号 vol.43

材料こだわり、シンプルな主食/千駄木のちっちゃくてあったかいパン屋さん「パリットフワット」

2019年02月03日 02:36 by inaba_yoko

地下鉄千代田線「千駄木駅」から団子坂を上がって、「文京区立森鴎外記念館」を過ぎてしばらく行ったところに「パリットフワット」はある。通りの向かい側は「私立駒込学園中学校・高等学校」。入り口からぐるりとガラス張りになっていて、店舗も工房も外から全部見通せる。

中に入れば、お客さんは、店主が粉をこねたりアツアツのパンを釜から取り出したりする作業をみながら買い物ができる。色とりどりのパンやお菓子が並び、中からもガラス越しに表が見渡せる明るい店だ。

店主は山崎香世さん。パンを作るだけではなく、売り子さん、そしてお店の経営者でもある。

「パリットフワット」は知る人ぞ知る人気のパン屋さんだ。どのようなパンを提供しているのだろうか。

パンフレットに書かれたパンの種類は、「白生地ふすまパン」「全粒粉パン」「ライ麦パン」「ピタ」「野菜のパン」「色々なパン」「お菓子たち」に分類され、それぞれに、シナモン、いちじく、ドライフルーツ、さつま芋、かぼちゃ、とうもろこし、ほうれん草、人参、じゃがいも、胡麻、ミルク、ココナツ、くるみ、オリーブ、紅茶、レモン、よもぎなどを練り込んだり混ぜ合わせたりトッピングしたりする。中でも「よもぎパン」は人気だ。

香世さんのパン作りへのこだわりはなにか。

「材料は確かなものをと、粉や野菜は国産を使い、パンはシンプルに、主食になるものを作っています」という。

主原料についてはパンフレットにも丁寧に記載してある。

「だからといって、完全なオーガニックのパン作りをしているわけではなく、ドライフルーツは輸入ものです。自分の手に届く限りの安全なパンを作りたい」

香世さんの子どもにはアレルギーがあり、「小さいうちは、母親が食べるものがそのまま伝わっていくわけなので、食べるものに苦労し手作りしていました」という。そんな折、働かなければならない事情が生じ、「子どもが小さいので遠くには勤めたくない。地元で何でも見えるところで仕事したい。自営かな」と考えたのが、パン屋さんを始めたきっかけだそうだ。

フリマでパンを売ったら手応えがあった。「やればできる!」と、いろいろなところで短期でパン作りを学び、開店に向けて3~4年かけて準備した。

「1999年4月に谷中で、今の店の半分の大きさの店舗を借りてスタートしました。1年間営業し、スペースを広げたくて千駄木にも出店しました。その後、千駄木の店舗ひとつに絞りました」という。谷中のお客さんは、そのまま千駄木の店にも来てくれた。「もともと千駄木の方が谷中の店に来てくれていたんですね」と香世さんは笑う。

「パン屋を始めて20年になりますが、『やりたい!』だけではできない。作ったら作っただけ売り切らないと。日々、あした潰れるかもしれないという心配の中でやっていて、続けられているのは奇跡。これは自分だけの力ではできません」という。いろいろな人の協力があってこその20年だ。

香世さんのパン作りに込める思いは、「毎日、安定しておいしいものを出す。ちょっとでも美味しく、楽しく、うれしい気持ちになってもらいたい」というもの。その思いがパンフレットの表紙の言葉につながっている。

「その日1日元気になるように。その時、その時間、素直になれますように。粉をこね、熟成させて愛情と祈りをこめて、ひとつひとつ手作りで焼いています」

一つ一つのパンに込められたその思いが、店全体の暖かい雰囲気を作っているのだろう。(稲葉洋子)

(パンの写真提供は パリットフワット)

パリットフワット

東京都文京区千駄木1-19-7

Tel/fax 03-5814-2339

営業時間9:00~18:30  月曜休み

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