JIBUNマガジン 文京区

2019年1月号 vol.42

電車にも乗って運べるコンパクト屋台で「どこでも商い」/新時代の屋台を“ZASSO”がデザイン

2019年01月03日 14:28 by inaba_yoko
2019年01月03日 14:28 by inaba_yoko

“ZASSO”は「デザインで街の楽しみを作ろう」という目的で、2016年に加藤正紘さんと彌吉健介さんで始めたデザインユニットで、<雑食>と<創造>という言葉の最初の文字をとって「ZASSO(雑創)」と名付けた。

 

「マルチクリエイトという意味で、雑にモノを作るという意味ではありません」と主宰者の1人、彌吉さんは笑う。街のくらしで、人々が楽しくなるようなものを、様々なアプローチで探り、創造していくという意味が込められているそうだ。

 

 

お2人は、同じ大学で建築や都市デザインを学び研究実践してきた仲間で、それぞれまちづくりの会社で仕事をしている。「仕事柄、さまざまな世代や職種の方とお話する機会があります。価値観やニーズも変容してきており、既存の専門領域だけではこれからのニーズに応えられない」という。「これは人口減少によって社会のあり方が変わってきていることによるものだと思います。単一の領域に限定されることなく、まちの中に個々に存在する領域を、横につなぐようなモノや仕組みがあったら、まちがもっと面白くなるのではないか」と考えている。

 

 

今取り組んでいるのは、背負って運べる屋台だ。

「3年前から屋台でコーヒーをふるまう人が出始めて、コミュニティツールとして屋台を使っているようでした。いいなぁと思ったのですが、モバイル屋台といっても、簡単にだれでもが扱えるような屋台にはなっていない。特に電車が主な移動手段のまちには不向きだ」と思ったそうだ。「屋台はもともと、ラーメン屋、居酒屋など、店主とお客さんが気軽に会話する居場所でした。この家でも職場でもない『気軽に会話できる居場所』をもっと地域に広げていったら、普段みなさんがやっている趣味や特技を通して人が繋がり、地域が繋がり、強く、笑顔が生まれる『まち』になっていくのではないか」と思った。

「そのために、気軽に移動できるよう、組み立てやすく、扱いやすい屋台がほしい」と思ったのが、新しい屋台作りのきっかけだと彌吉さんは言う。

 

 

「最近、『小商い』という言葉が認知されてきましたね。インターネットやものづくりを補助するツールの普及もあって、副業をする人も増えてきています。そこでこの屋台が活躍すると考えています。また、モノを売るだけでなく、自分を表現する…たとえば自分のパフォーマンスを披露したり、写真の展示をしたり、絵を描いたり、…まあ、モノを売るとこと自体が、表現活動の一つですよね」と加藤さんが続ける。

「扱いやすい屋台があれば、だれでもどこでも、お店として設えられて、道行く人々の目にとまり、立ち止まってもらえば、屋台を挟んで売り手買い手がわかりやすくなり、『表現』しやすくなる」と思ったそうだ。

 

 

「空き家があったとして、そこですぐ商いをしたくても、お金を出してリノベーション工事をしないと使えない。折りたためるような屋台があれば、すぐに小商いができる。そんな屋台を使った小商いがうまくいったら、店を作ってゆけばよい。まずは屋台から始めてみてはどうでしょう」

「線路がつながっているところであれば、どこでもお店を開ける。これが、この屋台の特徴です」

 

 

改良を重ね、現在、5機目の屋台を試作中だ。今までにない、折りたためて、屋台の形状を維持していて、帆布の屋根、檜木のテーブルなど素材感も維持しており、軽量化されて専用のバッグに入り、広げてもスペースを取らない屋台。

「この冬には、クラウドファンディングなど資金調達して商品化して、小商いをしたい人、表現をしたい人に届けたい」と語った。

このお2人、屋台を試せる市場も作りたいと考え、「あいそめ市」を立ち上げた。その詳細は4月号に続く。

(稲葉洋子)

写真提供=ZASSO

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