JIBUNマガジン

2017年06月号 vol.23

【ひと】落語を聴いて笑って、想像する力も鍛えよう!千駄木在住のぽんぽん亭遊月さん

2017年06月03日 10:42 by inaba_yoko
 
 JR中央線、長坂駅に降り立ち、無人の改札口を出ると、左手の八ヶ岳が迎えてくれた。うわぁ、近い。右手、長坂庁舎(コミュニティステーション)の後ろには南アルプス。まず目に入るのは標高2967メートルの甲斐駒ヶ岳。北杜市長坂町は八ヶ岳、南アルプス、富士山、どれもとても近くにくっきりと見える町だ。
 

 5月20日、コミュニティステーションのホールで、「里落語」が開催され、文京区千駄木在住のぽんぽん亭遊月さんこと棗田(なつめだ)真澄さんが出演した。「里落語」の席亭は、北杜市小淵沢在住の酔亭化枝(よってけし)さん。「山落語」いうものがあり、出演者も観客も4時間かけて、八ヶ岳連邦の編笠山に登って落語会を開いて、山小屋が揺れるくらい盛り上がるそうだが、これに対し、登山しなくてもだれでも行ける「里落語」を作った。地域で人気の落語会だ。
ぽんぽん亭遊月さんはアマチュアの落語家。本業はピアノの調律師だ。しかしこれまで日本全国の選手権や大会で数々の賞を手に入れてきた。まずは、「里落語」での遊月さんの落語と色物を鑑賞する。
 
 
 落語は、古典ではなく現代の話、ストーリーそのものが面白い上、枕、本題、実に気前よく随所に笑いのタネが仕掛けられていて、気持ちのよいテンポで進められる。観客はあっという間に笑いの渦に巻き込まれ、大口あけて笑ったまま「落ち」となる。
 

 この日出演の遊月さんを含めた女流3人は、同じ師匠のもとで落語を学び、全国レベルで数々の賞をとっている強者。たゆまぬ努力で磨かれた芸のもと、アマチュア音曲漫談ユニット、「ヒョロビリーズ」を結成、色物として寄席を盛り上げた。3人全員が落語やったんじゃ上演時間をオーバーしちゃうっていう時に、3人で何かやれば1人分の時間ですむからという理由で始めた。3年目になり、あちこちに呼ばれるようになったそうだ。本職はそれぞれ、ライター、グラフィックデザイナー、ピアノ調律師というメンバーだけあって、ネタは幅広い。見事な紙切りに合わせて、ピアニカの鍵盤を頭で弾く遊月さんの姿に観客は大喜び、大喝采。
 

 高座から降りたばかりのぽんぽん亭遊月さんにインタビュー。
―いかがでしたか、大成功でしたか。
聴いていてどうでしたか?
(そりゃそうだ。いや、大成功、面白かったです、会場中が途切れることなく沸きっぱなしだった)
 
―長坂のお客様の反応は、高座からみてどうでしたか。
あたたかくて乗りのいいお客様でした!
(観客は老若男女様々な年代層で、おっしゃるとおりのあたたかさ、そして乗りがいい)
 
―枕や本題は、観客や場所に合わせて変えていたのですか。
演目は先に決めていて筋は変わりませんが、枕も本題にも、この土地に合わせてたくさん「くすぐり」を仕込んでいます。
 
 
―落語をやるようになったいきさつを教えてください。
それまで十数年やっていた民話語りの沼田曜一先生が亡くなって困っていたとき、(立川)志の輔さんの「八五郎出世せず」を見て、これだ!と思い、落語を始めました。今年で11年になります。
 
―これだ!という決め手は、なんですか。
落語の中にはやりたいことが全部ぎゅっと詰まっていましたから。落語を聴くと、場面が手に取るように浮かんできて、物語に吸い込まれるような感覚があります。映像もなく、演劇とも違って扇子と手ぬぐいという小道具だけで、そこまで表現できるってすごい、と思いました。自分も目標は、お客様を噺の世界に引き込んで連れていけたらといつも思うのだけど、ほんとに難しいことですね。
 
―お好きな落語家はどなたですか。
 立川志の輔さん、柳家喬太郎さん、春風亭一之輔さん、ほかにもたくさんいらっしゃいます。
 
―11年の間に、全国でいろいろ賞をお取りになりましたね、どんな賞ですか。
  2010年 第2回社会人落語日本一決定戦 決勝進出(落語を始めて3年目)
  2011年 第4回ちりとてちん杯ふくい女性落語大会 優勝
  2016年 第43回全国日本社会人落語選手権 優勝(女性初)
  2016年 第6回落語国際大会IN千葉 はせべ賞
 
 
―どんなふうに落語をやってこられましたか。 
 全国各地の社会人落語仲間を呼んだり、仲間に呼ばれたりしながら、年間60席程度寄席に出演しています。会場は、ここのようなホールもあれば、小さな集会室のような場所もあり、さまざま。八ヶ岳の山小屋でやっている「山落語」にも出演しています。
 
―近々公演はありますか
 来月は千葉、横浜にぎわい座、大阪、宇都宮です。うーん、どこも遠いですね。3月には毎年不忍通りふれあい館などで、全国の社会人落語仲間20数名が集まる落語会「あたらし寄席」をやっています。社会人落語の面白さを体験しにぜひいらしてください。
(「あたらし寄席」の席亭は遊月さん。いつも200人のホールが満席になってしまいます)
 
―落語を聴くことを、みなさんにオススメする理由は。
 まずは家にこもらず出かけることがいいことと思います。そして声を出して笑い、聴いて場面を想像する。そうするといつまでもその記憶が残る。すべてボケ防止につながるはずです。都心は寄席も近いのでどんどん出かけていただきたいです。
(なんでも忘れると、ボケにつながるということかな。記憶力想像力を鍛えるならぜひ落語を)
 
―アマチュアとプロの違いをひとことで。
 プロはそれで食べている。アマチュアは他に仕事を持っている。
 
―最後に、これから挑戦したいことを。
 30分を超える長い落語に挑戦したいです。今年は「やれ」と言われているので、目下ネタ探し中です。

 ピアノの調律師の仕事以外の時間はアマチュア落語家として全国レベルで活躍する、ぽんぽん亭遊月(棗田真澄)さん。お仕事で手に入れたさまざま情報や経験も落語に取り入れて、プロとはひと味違うアマチュアならではの面白さが落語に生かされているのは間違いない。みなさまぜひ一度お出かけください。(稲葉洋子)

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