JIBUNマガジン 文京区

2017年02月号 vol.19

【まち】高齢者と子どもを絵本でつなげる/りぷりんとフレンズ・文京

2017年02月07日 13:18 by Takako-Oikawa
2017年02月07日 13:18 by Takako-Oikawa
シニア世代による絵本の読み聞かせ
 
「文京区にはさまざまな子育てサークルがあって、たくさんの若い人が活動しているのですね!」――小さな子どもと、そのパパやママが集まったイベント「まちの子育て交流ひろば」の会場を見て、「りぷりんとフレンズ・文京」のメンバーが驚いていました。りぷりんとフレンズ・文京は、シニア世代で構成した団体で、「絵本の読み聞かせボランティア」をしています。

会員になるには、「読み聞かせ」の心得やスキルを身につけるための研修を受ける必要があります。現在会員は36名おり、3人でひと組みとなって区内十数カ所を回っています。主に保育園や児童館、子育てサロンで、対象は子どもだけでなく、老人ホームでも活動しているそうです。

 
この日のイベントに参加したのは、代表の江口良一さん、読み聞かせインストラクターの星野尚美さん、そして研修第1期生の会員3名。自由に走り回る子どもたちを優しい笑顔で見守りながら、5人のメンバーはこの日読む絵本を何にするか相談していました。

大切にしているのは、子どもに寄り添い穏やかに届けること
 
イベントが中盤に差しかかる頃、絵本の読み聞かせが始まりました。メンバーが明るい声で「おいでおいでー!」と呼びかけると、子どもたちがマットの上に駆け寄ってきました。手遊び歌でテンポよく始まると、絵本ごとにメンバーが代わる代わる読んでいきます。

食い入るように絵本を見る子ども。ママに抱かれて聞く子ども。前方で読み手の声を楽しむように寝そべる子ども。反応はさまざまです。集まった子どもたちの様子に合わせて、読む本を臨機応変に変えることもよくあるそうです。

また、訪問先に行ってから、リサーチしていた年齢と違っていて戸惑うことも。そんな困りごとが少しでも減るようにと、対象年齢が偏らないよう何冊も用意しておきます。この日も急遽読む本を一部変えたそうですが、全くそれを感じさせない終始悠々とした雰囲気。子どもと一緒に参加したママたちも、安心感に満たされた様子でした。

 

実は高齢者のために作られたプログラム

読み聞かせボランティアに関わった動機を聞くと、「孫に聞かせるために腕を上げたくて」「脳の活性化に良いと思って始めた」「絵本が大好き」「絵本作家の松谷みよ子さんの読み聞かせ会で感銘を受けたから」など、メンバーによってさまざまです。

そんな皆さんが出会ったりぷりんとフレンズ・文京は、東京都健康長寿医療センターが推進する研究の一環で、シニア世代の健康増進・介護予防にもひと役買うというもの。名前にある「りぷりんと」とは、"復刻版”を意味し、「シニア世代が読み聞かせを通して再び社会で役割を担えるように」との願いが込められています。現在、文京区を含めた関東、滋賀県で8団体が「りぷりんと」として活動しています。


また、人生経験豊富なシニアが読み手になることで、情緒豊かな世界が広がり、読み手、聞き手双方の相乗効果も期待できるというもの。りぷりんとフレンズ・文京のメンバーは、「子どもたちと触れ合うことで、元気をたくさんもらえるんですよ」と語ります。天皇陛下と同じ年という代表の江口さんは、老人ホームで自分よりさらに10歳若いご老人に読み聞かせをすることもあり、「元気になりました」といった声をもらうそうです。

大勢の前で読み聞かせをするには、全員に絵本が見えるよう手を伸ばした位置で本を掲げ、声もしっかり出さなければなりません。そのためにも普段から体力と筋力を維持し、お腹から声を出し、また肺活量をつけることを心かげているそうです。

「もっともっと練習をしたいし、登場人物が引き立つような読み方ができるようになりたい。本の内容を3D化させられたらいいですね」と語り合うメンバー。この春、研修を終了した方が新たに10名加わるそうです。活動の場がさらに増えて、温かい交流がたくさん生まれることを期待しています。(後藤菜穂)

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