JIBUNマガジン 文京区

2016年12月号 vol.17

【子ども・まち】本郷のまちの魅力をカードゲームにして発売!探究・創造型学習塾「a.school」の小中学生/11日のゲームマーケット2016秋で実演・販売

2016年12月06日 10:39 by Takako-Oikawa
2016年12月06日 10:39 by Takako-Oikawa
 
 「接客の匠(たくみ)」「和札(わふだ)」「職人トレジャー」「老人集め様(さま)」――文京区の小中学生4人がそれぞれ、本郷のまちの魅力を盛り込んだオリジナルのカードゲームを開発し、商品化にこぎつけた。12月11日に東京ビッグサイトで開かれるアナログゲームのイベント「ゲームマーケット2016秋」で実演・販売する。4人は本郷の探究・創造型学習塾「a.school(エイスクール)」に通う子どもたちで、本郷のまちについての調べ学習の成果を、カードゲームという形で表現した。「商店街の接客は大事だと思ったので、そこを伝えたかった」「和菓子にはたくさんの種類があることを伝えたかった」など、伝えたいことは様々。夏休みにクラウドファンディングで資金を集め、パッケージもカードも子どもが描いた絵を生かしつつ、洗練された商品に仕上がった。
 

 a.schoolは2014年に文京区本郷に開設された小中高生の学びのための塾で、名物授業は「探究ラボ」。子どもたちの自主性を重んじ、じっくり考えさせ、問いかけながら、議論や発表のサポートをしている。2016年度春のテーマは「まち」と「カードゲーム」。子どもたちは4月から地元本郷のまちを知るために、魚店や菓子店、薬局など商店街の店主らにインタビューをした。質問項目も自分たちで考え、1人ひとりがテーマを決めて取り組んだ。a.school主宰者の岩田拓真さんは「地域とのつながりが少ない今の子どもたちに、リアルな体験を通してまちとつながってほしいと考えた」と言う。
 

 しかしなぜそこからカードゲームなのか? 「調べたことについて、発表して議論することは学校でもやる。そこで表現手段の一つとして、カードゲームを設定した。遊んでいるうちに、伝えたいことが伝わる」と岩田さん。7月にそれぞれが試作品を作って発表するお披露目会を実施した。そこで賞を得た小学4年生から中学3年生の4人が、商品化を決意。クラウドファンディングにも挑戦して30万円を集め、保護者やゲーム制作者、アマチュアを支援している専門家らのサポートを受けながら、夏休み返上でカードゲームを作り込んだ。
 

 できあがった4つのカードゲームは、子ども自身がコンセプトからゲームのルールまで考え、描いた絵が生かされているユニークなものだ。小学4年生の女子が作った「和札」は、本郷の和菓子店のインタビューで、和菓子の種類が多いことを知り、それをたくさんの人に知ってもらいたいという思いから生まれた。和菓子が描かれたカードを取り合っていくゲームだ。デザイナーの叔父がカードのデザインを手伝ってくれたという。また、「いろんな和菓子を食べることが大変だった」とのこと。
 
 

 中学1年生男子は、商店街の接客に興味を持ち、「接客の匠」を作った。魚店、ジュエリー店などのインタビューを通し、作業を止めて1時間でも客と立ち話するなど、関係を大事にしている商店街の接客について知った。そこで洋服店の接客について調べたところ、「接客されるのは面倒」「同じ売り文句は聞きたくない」と客が思っていることがわかり、質の良い接客とは何かという疑問が生まれたのでさらに調べ、接客の達人の接客法や、クリック回数などでその人の好みを分析してしまうウェブ店舗の手法なども学んだ。そうした調べ学習の結果が、客にいやがられずに売り上げを伸ばすことを競うカードゲームとして結実。「外国人の爆買いのような特殊カードの設定が難しかった。でも、学んだ内容をゲームの内容に重ねていく工程そのものが楽しかった。珍しい経験ができた」という。
 

 中学3年生男子の作品は「職人トレジャー」。「今の大人って、サラリーマンとか公務員とか楽しくないって言っているけど、職人さんは仕事のことを楽しそうに話してくれた。それをみんなに伝えたくて」。内容は、職人、最上の豆、水、機械などを集めながら、いかに一番おいしいどら焼きを作るかを競うゲームだ。探究学習で「しごと愛とは何か」について研究した結果、「こだわり」「挑戦」「つながり」などの要素がわかってきたので、それを「愛情カード」に投影させた。「しごと愛の要素はたくさんあったので、絞り込むのが難しかった。夏休みは旅行中も作っていて、楽しかった。一生の宝物です」
 
 

 「老人集め様」は、本郷のNPO法人「街ing(まっちんぐ)本郷」が取り組んでいる「ひとつ屋根の下」という、独居のお年寄りと大学生が一緒に暮らすプロジェクトに興味を持った小学5年生男子が製作。お年寄りと大学生が一緒に暮らすことの楽しさや難しさを表現した。「もともとおじいちゃんが好き。医療器具屋さんのおじいちゃんに本郷の歴史などを聞き取りしていて、この人と住んだら面白そうだと思った」と話す。箱にマークを入れたり、見やすくしたりして「商品っぽいものにできた。普通にうれしい」。
 
 
12月11日は東京ビッグサイト東7、8ホールで開かれる「ゲームマーケット2016秋」会場内のN28ブースで、10時から17時まで実演販売する。

問い合わせはa.school(エイスクール)
info@aschool.co.jp
サイト:http://aschool.co.jp/

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