JIBUNマガジン 文京区

2016年05月号 vol.10

【まち・ひと】店先で「タイルあげます」/女性が活躍、「左官の図書館」も/千駄木の原田左官工業所

2016年04月30日 22:25 by Takako-Oikawa
2016年04月30日 22:25 by Takako-Oikawa
 タイルご自由にお持ちください――千駄木の不忍通り沿いにある原田左官工業所では、店先に施工に使えない半端なタイルなどを並べ、自由に持ち帰れるようにしている。社長の原田宗亮さんは「捨てればゴミですが、もったいないので再利用してもらえれば」と話す。左官といえば壁塗りの達人だが、全国的にも珍しい女性の左官が多い事業所として有名で、DIYのお手伝いもしてくれるとか。昨年から事務所1階を左官の技のショールームに改装。下町にありながら新たな挑戦を続けている。
 
原田宗亮社長

 いまや壁といえば石膏ボードにペラペラな壁紙が定番とさえいえるようになってしまったが、かつての日本家屋の主流は土壁だった。近年は漆喰や珪藻土の壁が、その風合いや調湿性、自然素材であることなどから注目されてきている。爆発的人気というわけではないが、じわじわと浸透しつつあるという。
 
 
事務所の壁は珪藻土

 左官はコテひとつで壁を均一にきれいに仕上げたり、模様を描いたりできる職人だ。かつては「見習いにはコテを持たせない」「見て覚えろ」が主流だったが、それでは現代の若者はついていけない。そこで原田さんは新人にはコテを持たせ、塗り方を教えるしくみに変えたところ、新人が定着するようになったという。女性の左官希望者も増え、約50人の職人のうち、現場に出る女性は8人いるという。美大の新卒から転職組まで幅広く、子どもを育てながら職人をめざしている人もいるそうだ。
 
 
女性の左官が活躍中

 プロの仕上げは圧倒的に美しいのだが、中にはDIYで自ら壁塗りをしたい人もいる。原田左官工業所では、一日左官体験や出張指導なども有料で実施し、DIYの支援もしている。支援を受けて自宅の壁を自分で仕上げた人もいるという。
 壁塗りだけでなく、タイル張りや防水加工なども実施。破損したタイルや余ったタイルはかつて残土として処分していたが、トラック何台にもなってしまうためもったいないと思い、試しに表に置いてみたところ、飲食店の人がなべしきにとか、ネコよけに庭に敷きたいなど、いろんな人がいろんな目的で持ち帰っていった。それがタイル放出サービスの始まりだという。「最近は大きいタイルがはやりですね。壁だとレンガ調のものなどもあります」
 
こんな壁も左官の技

 昨年からショールームを改装し、「左官の図書館」というコンセプトで、左官の素材や表現方法のサンプルを常時100種類以上みられるようにしたという。その名も「SAKAN LIBRARY」。その場で左官の技を駆使し、さまざまなサンプルを見せるということも実践しているそうだ。

原田左官工業所(文京区千駄木4-21-1)

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